[PG-20-04] 片脚ドロップジャンプ着地動作における着地方向の違いによる衝撃緩衝と下肢関節運動との関係
【背景と目的】ジャンプ着地時の衝撃緩衝には、体幹・下肢を屈曲させ最大の床反力垂直成分(VGRF)に達するまでの時間を長くする着地動作が推奨されている。スポーツ動作では多方向への片脚ドロップジャンプ着地が要求されるが、着地方向の違いによる衝撃緩衝と下肢関節運動との関係は明らかでない。本研究では、片脚ドロップジャンプ着地動作における着地方向の違いによる衝撃緩衝と下肢関節運動との関係を明らかにすることを目的とした。【方法】下肢に重篤な整形外科疾患の既往が無い健常成人10名(男性7名、女性3名、身長166±10.3㎝、62.5±8.4㎏)を対象とした。測定課題は、30㎝台上での非利き脚片脚立位から、片脚で40㎝前方、後方、外側の3方向へジャンプし、床反力計に被検脚にて着地させた。試技は3回施行し、平均値を指標とした。計測機器は、赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置MAC3D(sampling 200Hz)と床反力計(sampling 1000Hz)を使用し、Helen Hayesマーカーセットにて測定した。解析は、着地後にVGRFが10Nを越えた時点を接地(IC)とし、VGRFの最大値をICからVGRFの最大値が出現した時間で除した衝撃緩衝係数(LR: loading rate)、股、膝関節最大屈曲角度と足関節最大背屈角度、股、膝、足関節における負の関節パワー(仕事率)の最大値を算出した。統計学的解析には、1要因の反復測定分散分析とBonfferoni法を用い、有意水準は5%とした。【結果】LRは、前方; 115.5N/BW/s, 後方; 67.8N/BW/s, 外側; 81.7N/BW/sであり、前方は、後方と外側より有意に大きかった(p<0.05)。股関節屈曲角度は、前方; 36.5°, 後方; 38.3°,外側; 34.5°であり、膝関節屈曲角度は、前方; 51.3°, 後方; 49.5°, 外側; 51.3°であり、有意差を認めなかった。足関節背屈角度は、前方; 9.8°, 後方; 17.7°,外側; 13.8°であり、後方は前方、外側より有意に大きかった(p<0.05)。負の関節パワーは、股関節(前方; -22.6W/kg, 後方; -25.4W/kg, 外側; -25.2W/kg)と足関節(前方; -10.9W/kg, 後方; -15.4W/kg, 外側; -11.4W/kg)で有意差を認めなかった。一方、膝関節(前方; -10.4W/kg, 後方; -3.9W/kg, 外側; -8.8W/kg)の負の関節パワーは、前方および外側が後方に比べ、有意に大きかった(p<0.05)。【結論】前方着地は、他方向に比べ、LRの値が有意に大きく、衝撃を緩衝できていないことが示唆された。後方着地は、足関節背屈運動による衝撃を緩衝する戦略を行い、前方と外側は膝関節の筋力による衝撃を緩衝する戦略を行うことが示唆された。よって、着地方向の違いにより衝撃の緩衝戦略が異なると示された。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、すべての対象者には事前に本研究の目的および方法、結果の取り扱い等について説明し同意を得た。
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