第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[PR-16] PR-16

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:PR-16 (webポスター会場)

座長:岡原 聡(大阪急性期・総合医療センター)

[PR-16-01] 大腿骨顆部骨折術後の膝関節屈曲可動域制限に対して超音波画像評価を用いて機能改善に至った一症例

*堤 勇基1、福本 竜太郎1、福谷 克基1、瀬尾 真矢1、藤井 隆文1 (1. 医療法人大植会葛城病院)

【症例紹介】

 60歳代の女性。鉄板上で滑って転倒し当院に救急搬送され、右大腿骨顆部骨折と診断を受け観血的骨接合術を施行された。職業は着付師であるため、しゃがみ込み動作の獲得が必要であった。そのため、右膝関節屈曲可動域の向上を目的に理学療法を行った。

【評価とリーズニング】

 初期評価(術後7週)では右膝関節周囲の熱感は軽度であり、膝関節可動域(R/L)は伸展0°/0°。屈曲は125°/150°で膝蓋骨上縁~外側に伸張痛を訴えた。膝関節屈曲可動域制限の要因を精査するため、超音波診断装置を用いた評価を行った。計測肢位は背臥位で、抽出部は膝蓋骨直上~5cmを長軸とした。膝蓋上嚢の厚みは3.9mmと関節水腫を認めた。大腿骨前脂肪体(以下、PFP)の厚みは膝関節伸展0°位(R/L)で11.6mm/3.5mm、膝関節屈曲90°位(R/L)で5.9mm/3.3mmと患側が厚い結果となった。また、膝蓋上嚢の滑走量の評価を目的に膝関節屈曲90°位で膝蓋骨直上~膝蓋上嚢の上端までの距離を計測した。結果は、21mm/11mmであり、患側で約10mm多い結果となった。上記の評価からPFPの柔軟性低下に伴う膝蓋上嚢の滑走量が低下したと考えられる。滑走障害を生じた膝蓋上嚢は連絡を持つ大腿四頭筋遠位部に伸張ストレスを生じさせる。その結果、膝関節屈曲可動域制限、膝蓋骨上縁に伸張痛が生じたと考えた。

【介入と結果】

 PFPは膝関節屈曲に伴い内側広筋・外側広筋の深部に流入し、その程度は外側広筋の深部で多いと報告されている。そのため、一般的に臨床で行われている大腿四頭筋の筋力増強練習や歩行練習に加えて、膝関節軽度屈曲位にて膝関節屈曲時のPFPの正常動態と同じ方向への移動を促した。その結果、術後13週でPFPの厚みは膝関節伸展0°位で6.1mm、膝関節屈曲90°位では2.8mm、膝蓋上嚢の滑走量は13.7mm、関節水腫は1.1mmと改善を認めた。結果として、右膝関節可動域は屈曲140°と改善を認め、しゃがみこみ動作が可能となった。

【結論】

 林は、PFPは膝蓋上嚢の滑走性を維持するために重要な組織であると述べている。本症例はPFPの柔軟性低下に対し介入した結果、PFPの柔軟性が向上したと考え、それに伴い膝蓋上嚢の滑走量の改善を認めた。その結果、膝関節屈曲可動域の改善を認め、しゃがみ込み動作の獲得に至った。

【倫理的配慮、説明と同意】

 本報告の主旨は、ヘルシンキ宣言に基づき患者本人に十分に説明し同意を得た。

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