第33回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

Web Poster

[PR-17] PR-17

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:PR-17 (webポスター会場)

座長:鯨津 吾一(大阪府済生会茨木病院)

[PR-17-02] 造血幹細胞移植後患者に対し、身体機能維持に外来での運動指導が奏功した症例

*中村 凌大1、中川 泰慈1 (1. 地方独立行政法人市立吹田市民病院)

【症例紹介】

29歳男性,身長は186.7cm。慢性活動性EBウイルス感染症と診断されY日に造血幹細胞移植(以下HSCT)を施行、Y+10日に移植片対宿主病(以下GVHD)と診断、同日から治療を開始。Y+166日に自宅退院、約1年半で復職となった。

【評価とリーズニング】

Y-59日、一般病棟期間より介入。初期評価時は体重65.0kg、Skeltal mass index(以下SMI)6.9kg/㎠、膝関節伸展筋力が徒手筋力計で右22.3kgf/左20.3kgf、握力が右41.1kgf/左39.2kgf、6分間歩行距離は485m、Cancer fatigue scale(以下CFS)13点であった。HSCT患者に対する入院中の運動療法は倦怠感の改善や身体機能の維持に有用であり多く実施されている。一方で,退院後の運動習慣の確保や意欲の維持は難しいとされる。若年でありながら急性GVHD合併により機能回復の遅延が予測された本症例に対し、外来での定期的な身体機能評価、運動指導が身体機能維持に必要であると考えた。

【介入と結果】

入院中はリハビリ室、無菌室内で修正Borg scale4、最大心拍数の60~70%の負荷を目安とし1回20~40分、週5~7日の運動療法を実施。自宅退院前には修正Borg scale4程度の自覚的疲労感を目安に週5~7日、1日20~40分のストレッチや筋力トレーニング方法を記載した自主練習用パンフレットを配付、動作に伴う呼吸法の指導を行った。退院後は2カ月に1度、外来にて身体機能評価、フィードバックを行うことで運動意欲の維持に努めた。また、自主練習方法の再確認や1日の目標歩数を設定することで運動習慣の確保を促した。退院時は体重67.0kg、SMI6.4kg/㎠、膝関節伸展筋力が右22.2kgf/左21.8kgf、握力が右32.2kgf/左31.9kgf、6分間歩行距離は449m、CFS4点であった。復職前は体重67.9kg、SMI6.6kg/㎠、膝関節伸展筋力が右22.1kgf/左19.1kgf、握力が右37.5kgf/左35.2kgf、6分間歩行距離は412m、CFS4点であった。

【結論】

HSCTでは前処置として大量抗癌剤投与や無菌室内での長期間にわたる安静を強いられ、重度の廃用症候群が生じることが報告されている。原疾患の予後不良因子、長期臥床、さらに合併したGVHDに対する長期の治療により、身体機能の回復に時間を要した。そこで、入院中の運動療法だけでなくパンフレットによる自主練習指導、外来で定期的な身体機能評価や運動指導を行ったことで運動習慣の確保ならびに運動意欲の維持が可能であった。その結果、移植後約1年半での社会復帰となった。HSCT患者に対する入院中の運動療法は推奨されているが外来での運動療法は保険診療の適応外のため臨床適応性は低いのが現状である。ただし、外来での定期的な運動指導、身体機能評価を行うことで退院後の身体機能維持、早期の社会復帰に寄与する可能性がある。

【倫理的配慮、説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき書面にて説明を行い、十分に同意を得た。

Please log in with your participant account.
» Participant Log In