11:15 AM - 11:25 AM
[WO-2-05] 開心術後,運動パフォーマンス低下を認めた症例~タイプDパーソナリティに着目して~
【症例紹介】
本症例は50歳代女性,約20年前より僧帽弁閉鎖不全を指摘され,内服加療を受けていた.うっ血性心不全・頻脈型心房細動にて入院歴がある.今回,重度僧帽弁狭窄症兼閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症に対し開心術(僧帽弁置換術、三尖弁形成術)目的にて入院・手術となる.入院前ADLは家事全般をこなし,接客業のパートをされていた.
【評価とリーズニング】
本症例は術後トラブルなく経過は良好であったが,退院前身体評価では,症候限界負荷試験の最終負荷量は20Wしか上げれなかった.この時の症候限界時前の身体活動量は3.1METsであり,入院前の活動量は最低でも4.0~6.8METsをこなしていたと考えられ,入院前と退院時に身体活動量の乖離を認めた.この事は,ネガティブ感情において,疲労自覚症状と強い正の相関がある事や,競技の分野において状態不安と低いパフォーマンスに関係性があるとの報告があり,本症例においても不安やネガティブ感情が要因となって,本来の運動パフォーマンスが低下しているのではないかと考えた.また,入院中の本症例の様子として,日中は臥床傾向であり,活気や意欲低下が目立っていた.この事は,術後の創部痛や倦怠感,家庭や社会復帰についての不安,また入院中のストレスによって,ネガティブ感情を助長し,身体活動量を制限していたのではないかと考えた.そこで精神面に着目し,タイプDパーソナリティと抑うつに対する評価を行った.
タイプDパーソナリティの評価としてネガティブ感情項目(以下NA),社会的抑制項目(以下SI)を評価する日本語版DS14を用い,抑うつの評価としてPHQ-9日本語版「こころとからだの質問票」を用いた.初期評価時ではDS14は46点(NA:21点,SI:25点),PHQ-9はカットオフ値内であり,本症例はタイプDパーソナリティに区分された.
【介入と結果】
先行研究から,有酸素運動を実施することにより,一時的にも長期的にも抑うつ・不安を低減させる可能性が示されている為,外来リハビリテーションで20W20minから自転車エルゴメーターを用いて有酸素運動を開始した.運動処方はKarvonenの式を用いたHR処方(K=0.4)111bpmとした.自主トレーニング時にはBorg指数13以内でのウォーキングによる運動を処方.また,運動習慣定着のためのチェックリスクの作成を行った.術後3ヶ月後の最終評価では,症候限界負荷試験の最終負荷量は80Wに改善し,DS14は33点(NA:12点,SI:21点)であり,特にNAの改善を認めた.また,不安やネガティブな発言が消失し,表情も明るくなり,社会復帰について前向きな様子が見られた.
【結論】
有酸素運動を実施した事で,ネガティブ感情が軽減し,身体活動量の改善を図る事ができ,社会復帰に前向きになったのではないか.また,不安やネガティブ感情が,運動パフォーマンスを低下させた要因にもなり得る事が示された.
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た.本発表は当院倫理委員会にて承認を得た.
本症例は50歳代女性,約20年前より僧帽弁閉鎖不全を指摘され,内服加療を受けていた.うっ血性心不全・頻脈型心房細動にて入院歴がある.今回,重度僧帽弁狭窄症兼閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症に対し開心術(僧帽弁置換術、三尖弁形成術)目的にて入院・手術となる.入院前ADLは家事全般をこなし,接客業のパートをされていた.
【評価とリーズニング】
本症例は術後トラブルなく経過は良好であったが,退院前身体評価では,症候限界負荷試験の最終負荷量は20Wしか上げれなかった.この時の症候限界時前の身体活動量は3.1METsであり,入院前の活動量は最低でも4.0~6.8METsをこなしていたと考えられ,入院前と退院時に身体活動量の乖離を認めた.この事は,ネガティブ感情において,疲労自覚症状と強い正の相関がある事や,競技の分野において状態不安と低いパフォーマンスに関係性があるとの報告があり,本症例においても不安やネガティブ感情が要因となって,本来の運動パフォーマンスが低下しているのではないかと考えた.また,入院中の本症例の様子として,日中は臥床傾向であり,活気や意欲低下が目立っていた.この事は,術後の創部痛や倦怠感,家庭や社会復帰についての不安,また入院中のストレスによって,ネガティブ感情を助長し,身体活動量を制限していたのではないかと考えた.そこで精神面に着目し,タイプDパーソナリティと抑うつに対する評価を行った.
タイプDパーソナリティの評価としてネガティブ感情項目(以下NA),社会的抑制項目(以下SI)を評価する日本語版DS14を用い,抑うつの評価としてPHQ-9日本語版「こころとからだの質問票」を用いた.初期評価時ではDS14は46点(NA:21点,SI:25点),PHQ-9はカットオフ値内であり,本症例はタイプDパーソナリティに区分された.
【介入と結果】
先行研究から,有酸素運動を実施することにより,一時的にも長期的にも抑うつ・不安を低減させる可能性が示されている為,外来リハビリテーションで20W20minから自転車エルゴメーターを用いて有酸素運動を開始した.運動処方はKarvonenの式を用いたHR処方(K=0.4)111bpmとした.自主トレーニング時にはBorg指数13以内でのウォーキングによる運動を処方.また,運動習慣定着のためのチェックリスクの作成を行った.術後3ヶ月後の最終評価では,症候限界負荷試験の最終負荷量は80Wに改善し,DS14は33点(NA:12点,SI:21点)であり,特にNAの改善を認めた.また,不安やネガティブな発言が消失し,表情も明るくなり,社会復帰について前向きな様子が見られた.
【結論】
有酸素運動を実施した事で,ネガティブ感情が軽減し,身体活動量の改善を図る事ができ,社会復帰に前向きになったのではないか.また,不安やネガティブ感情が,運動パフォーマンスを低下させた要因にもなり得る事が示された.
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た.本発表は当院倫理委員会にて承認を得た.
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