第33回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

oral session

[WO-4] WO-4

Sun. Jul 11, 2021 11:45 AM - 12:25 PM web会場②(ウェビナー1000名) (web会場②)

座長:大野 直紀(りんくう総合医療センター)

11:45 AM - 11:55 AM

[WO-4-01] 新型コロナウイルス感染症による重症肺炎の1症例 ~CTによる脊柱起立筋の筋横断面積に着目して~

*木下 敬詩1、杉谷 竜司1、白石 匡1、藤田 修平1、水澤 裕貴1、工藤 慎太郎3,4、木村 保1、東本 有司2、福田 寛二2 (1. 近畿大学病院 リハビリテーション部、2. 近畿大学医学部 リハビリテーション医学、3. 森ノ宮医療大学大学院 保健医療学研究科、4. 森ノ宮医療大学インクルーシブ医科学研究所)

【症例紹介】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)は全世界に感染が拡大し,本邦でも感染者数が急増している.今回,COVID-19による重症肺炎により長期隔離と呼吸器管理となり,隔離解除後より理学療法を実施した症例を経験したため,ここに報告する.症例は54歳,男性.腎移植と高血圧の既往を有しているが,入院前の日常生活動作(以下,ADL)は全て自立していた.受診4日前に発熱,2日前にPCR検査が陽性となり,他院に入院となった.第11病日に呼吸状態が悪化し当院に搬送となった.第14病日に気管挿管,第33病日に気管切開,その後徐々に病状改善し第68病日に陰性化が確認され隔離解除となり,第70病日より呼吸器離脱,理学療法を開始した.

【評価とリーズニング】初期評価では両上下肢の筋力はMMT2,ADLは全て全介助であった.呼吸状態は人工鼻4LにてSpO298%であったが,安静時より努力性呼吸があり,痰の貯留も著明であった.肺炎治療後のADLレベルと関連するとされるCT検査を用いた脊柱起立筋の横断面積/体表面積は,第11病日19.8㎠/㎡,第47病日9.03㎠/㎡と短期間に著明に低下していた.これはADL不良群のカットオフ値17.24㎠/㎡を下回っており,肺炎治療後のADLレベルの低下が予測された.骨格筋の1日の筋横断面積の減少率は,廃用は約0.40%,ICU関連筋力低下(以下,ICU-AW)は約1.42%と報告され,本症例の減少率は1.51%であり,廃用以外の影響も推測された.この過剰な筋萎縮はCOVID-19特有の病態である可能性も考えられたが,先行報告はなく本症例の高度の炎症反応や多量のステロイド投与という背景を踏まえるとICU-AWと類似した機序による筋萎縮であると推測された.ICU-AWは異化の亢進と同化の低下した状態であり,過度の身体活動は過用性筋力低下を生じると報告されているため低負荷の運動から開始した.

【介入と結果】理学療法(6回/週,2単位)は排痰,コンディショニング,呼吸練習,初期は低負荷の運動から開始し,徐々に運動強度を上げた.第72病日より端坐位,第87病日より車椅子坐位,第91病日より立位,第97病日より歩行器による歩行を開始し,20m歩行まで可能となり,第105病日に転院となった.その後,退院後の初受診(第160病日)では脊柱起立筋の横断面積/体表面積は16.9㎠/㎡まで増加し,自宅生活は自立となったが,職場復帰には至っていなかった.

【結論】COVID-19は本症例のように治療経過からICU-AWが生じるリスクが高いと予測され,CT検査による骨格筋の減少率を評価することは機能低下の予測に有用であると考える.本症例はCOVID-19による重症肺炎後160日経過しているが,脊柱起立筋の横断面積はADL不良群のカットオフ値より低下していた.よって,COVID-19による重症肺炎は陰性化した後でも機能障害が残存し,社会復帰に時間を要する可能性がある.

【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,症例報告の趣旨を本人に説明し同意を得た.

Please log in with your participant account.
» Participant Log In