12:45 PM - 12:55 PM
[O-02-2] 超音波診断装置を用いた治療により頸椎症の症状が改善した一症例 ~double crush syndromeに着目して~
Keywords:超音波画像診断装置、double crush syndrome
【症例紹介】
症例は70歳代の女性、令和X年Y月に受傷機転なく徐々に右頸部と右肩外側部に疼痛としびれが出現した。2週間経過しても症状が改善しないため同月に当院を受診し、頸椎症と診断されリハビリテーションを開始した。
【評価とリーズニング】
座位にて右上肢下垂位保持、右肩関節屈曲動作、結帯、結髪動作で症状の増悪を認めた。疼痛としびれはNumerical Rating Scale(以下NRS)が右頸部7/10、右肩外側部7/10であった。検査測定では、Morley test陽性、上肢下方牽引テスト陽性で右肩外側部に知覚異常を認めた。超音波画像診断装置(以下エコー)にて、鎖骨上窩部で腕神経叢を描出し、同部位に圧痛を認めた。そのため、医師に腕神経叢のhydrorelease(以下HR)を依頼した。HR実施後、右頸部の疼痛としびれは改善したが、右肩外側部の症状と知覚異常が残存した。近年、神経が複数部位で障害を受けるdouble-crush syndrome(以下DCS)の概念が提唱され、報告も散見される。そのため、DCSを念頭に置き、エコーにて再評価を行なったところ、健側と比較し上腕三頭筋と小円筋の筋間に結合組織の高輝度像と同部位を走行する腋窩神経に圧痛を認めた。これらより、腋窩神経の自由度の低下を問題点とした。
【介入と結果】
週に1回のリハビリテーションを実施した。問題点に対してエコーガイド下で上腕三頭筋と小円筋の筋間に剪断刺激を加える徒手療法を行った。また、腋窩神経の長軸方向への滑走を促すため肩関節内旋位での肩関節外転、伸展および肩関節内転、屈曲動作を反復して行った。ホームエクササイズとして、肩関節90°外転位、肘関節90°屈曲位から、肘伸展、頚部同側側屈および肘関節屈曲、頚部対側側屈動作を反復して行う神経モビライゼーションを指導した。右頸部の疼痛としびれはHR実施後にNRSが3/10まで改善し、3週間後に0/10となった。右肩外側部の疼痛としびれは理学療法後にNRSが4/10まで改善し、7週間後に0/10となり知覚異常も消失した。
【結論】
本症例はDCSが考えられ、エコーを用いた理学療法と医師との連携により症状の改善が得られた。末梢神経の周囲を構成する疎性結合組織は、密生化によりNervi Nervorumの発火、障害を引き起こし、疼痛やしびれを呈すると考えられる。さらに、神経症状が複数部位で確認される場合は、DCSを念頭に置き、評価と治療を行う必要がある。神経障害の評価と治療の観点からエコーは必要不可欠であると考える。
症例は70歳代の女性、令和X年Y月に受傷機転なく徐々に右頸部と右肩外側部に疼痛としびれが出現した。2週間経過しても症状が改善しないため同月に当院を受診し、頸椎症と診断されリハビリテーションを開始した。
【評価とリーズニング】
座位にて右上肢下垂位保持、右肩関節屈曲動作、結帯、結髪動作で症状の増悪を認めた。疼痛としびれはNumerical Rating Scale(以下NRS)が右頸部7/10、右肩外側部7/10であった。検査測定では、Morley test陽性、上肢下方牽引テスト陽性で右肩外側部に知覚異常を認めた。超音波画像診断装置(以下エコー)にて、鎖骨上窩部で腕神経叢を描出し、同部位に圧痛を認めた。そのため、医師に腕神経叢のhydrorelease(以下HR)を依頼した。HR実施後、右頸部の疼痛としびれは改善したが、右肩外側部の症状と知覚異常が残存した。近年、神経が複数部位で障害を受けるdouble-crush syndrome(以下DCS)の概念が提唱され、報告も散見される。そのため、DCSを念頭に置き、エコーにて再評価を行なったところ、健側と比較し上腕三頭筋と小円筋の筋間に結合組織の高輝度像と同部位を走行する腋窩神経に圧痛を認めた。これらより、腋窩神経の自由度の低下を問題点とした。
【介入と結果】
週に1回のリハビリテーションを実施した。問題点に対してエコーガイド下で上腕三頭筋と小円筋の筋間に剪断刺激を加える徒手療法を行った。また、腋窩神経の長軸方向への滑走を促すため肩関節内旋位での肩関節外転、伸展および肩関節内転、屈曲動作を反復して行った。ホームエクササイズとして、肩関節90°外転位、肘関節90°屈曲位から、肘伸展、頚部同側側屈および肘関節屈曲、頚部対側側屈動作を反復して行う神経モビライゼーションを指導した。右頸部の疼痛としびれはHR実施後にNRSが3/10まで改善し、3週間後に0/10となった。右肩外側部の疼痛としびれは理学療法後にNRSが4/10まで改善し、7週間後に0/10となり知覚異常も消失した。
【結論】
本症例はDCSが考えられ、エコーを用いた理学療法と医師との連携により症状の改善が得られた。末梢神経の周囲を構成する疎性結合組織は、密生化によりNervi Nervorumの発火、障害を引き起こし、疼痛やしびれを呈すると考えられる。さらに、神経症状が複数部位で確認される場合は、DCSを念頭に置き、評価と治療を行う必要がある。神経障害の評価と治療の観点からエコーは必要不可欠であると考える。