第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-05] 一般演題(運動器③)

Sun. Jul 3, 2022 1:20 PM - 2:05 PM 会場3 (10階 1008会議室)

座長:森 憲一(おもて整形外科・骨粗鬆症クリニック)

1:40 PM - 1:50 PM

[O-05-3] 右人工膝関節単顆置換術後の膝前内側部痛に着目した一症例

藤田 祐希1, 堀江 昌弘1, 村岡 秀映1,2, 森井 裕太1,2, 玉置 昌孝1 (1.関西医科大学くずは病院リハビリテーションセンター, 2.関西医科大学大学院医学研究科)

Keywords:神経筋電気刺激、歩行

【症例紹介】
 症例は右変形性膝関節症と診断された70歳代女性である。X日に当院にて右人工膝関節単顆置換術を施行した。X+1日より理学療法を開始したが、歩行時痛が強く杖歩行開始はX+20日と田仲ら(2009)の報告する9.9±2.3日より遷延していた。

【評価とリーズニング】
 X+5日の歩行器での6分間歩行距離は310mであったが、右爪先離地時にNumerical Rating Scale(以下NRS)4の膝前内側部痛が生じた。膝前内側部痛は膝関節他動屈曲時にNRS4、HoffaテストではNRS6の疼痛を認め、内側膝蓋支帯と膝蓋下脂肪体に生じたと考えた。同日の検査測定では、関節可動域(以下ROM)は右膝関節屈曲80°、右膝関節伸展-5°、右足関節背屈-5°であり、徒手筋力検査(MMT)は右膝関節伸展3(P)、右膝関節屈曲3(P)であった。歩行は右立脚初期から中期にて膝関節伸展が乏しく、立脚後期を膝関節軽度屈曲位で迎えていた。
 膝前内側部痛は立脚後期を膝関節軽度屈曲位で迎えることで内側膝蓋支帯の伸張ストレス、深層に位置する膝蓋下脂肪体の圧縮ストレスが生じたと考えた。

【介入と結果】
 X+30日、右膝関節屈曲115°、右膝関節伸展0°、右足関節背屈-5°、HHDを用いた筋力測定では、右膝関節伸展は10.4kgf、右膝関節屈曲は5.5kgfであった。歩行は完全自立となったが、立脚後期に右膝関節屈曲とともに下腿外旋が確認され、膝前内側部にNRS4の疼痛が残存した。
X+38日の疼痛検査ではHoffaテスト陽性、さらに抵抗下での膝関節伸展時にはNRS6の疼痛を認めた。
立脚期中に認めた下腿外旋のマルアライメントを改善する目的で、X+43日より座位での膝関節伸展の等尺性収縮時に内側広筋に対する神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation 以下NMES)を開始した。NMESは15分/1回、2回/1日、周波数50Hz、パルス持続時間250μsec、on/off:15秒/45秒、40%MVICの強度で実施した。
 NMES開始直後より、右立脚後期の膝関節屈曲に変化は見られなかったが、下腿外旋が減少し歩行時痛はNRS2と軽減した。X+46日には膝前内側部痛が消失し、X+52日のROMは右膝関節屈曲130°、足関節背屈0°、筋力は右膝関節伸展16.9kgf、膝関節屈曲7.3kgf、6分間歩行距離は450mに改善した。

【結論】
 膝前内側部痛は右立脚後期に生じた膝関節屈曲と下腿外旋により内側膝蓋支帯の伸張ストレス、膝蓋下脂肪体の圧縮ストレスにより生じたと考えた。内側広筋を促通する目的でNMESを実施したところ、NMES開始直後より下腿外旋が軽減し、疼痛が改善した。本症例において、下腿外旋のマルアライメントの改善が疼痛軽減に有効であったと考えられた。