1:50 PM - 2:00 PM
[O-07-4] 回復期リハビリテーション病棟において早期からの2動作前型歩行練習を実施し歩行獲得に至った脳卒中片麻痺患者の一例 -患者背景・残存機能に着目して-
Keywords:脳卒中、2動作前型歩行
【症例紹介】
70代男性.X日左橋梗塞を発症し,右上下肢麻痺と構音障害を認めた.X+21病日目にリハビリテーション目的で当院へ転院した.右上下肢麻痺によりActivities of Daily Living (以下ADL)は介助が必要な状態であり,歩行も全介助であった.環境因子は3階建ての一軒家に住んでおり段差が多いことや,妻と同居していることが挙げられる.個人因子としては元々ジムやゴルフなど体を動かすことが好きであり,活動的な性格であった.
【評価とリーズニング】
初期評価(X+21病日)として, Stroke Impairment Assessment Stage(以下SIAS)は45/76点,Fugl-Meyer Assessment L/E Motor(以下FMA)は10/34点,Trunk Control Test(以下TCT)は61/100点,Brunnstrom Stage(以下Brs)は上肢Ⅳ・手指Ⅳ・下肢Ⅱ.下肢の感覚について触覚は問題なし,位置覚は軽度鈍麻. Manual Muscle Test(以下MMT)は麻痺側下肢1~2,非麻痺側股関節外転3,その他は4であった.Functional Independence Measure(以下FIM)は運動項目39/91点,認知項目31/35点,総合計70/126点であった.高次脳機能障害は分配性の注意障害を認めた.装具なし歩行では右initial contact(以下IC)での前足部接地,右loading response(以下LR)~mid stance(以下Mst)でのback knee・膝折れ,右swingでの前足部の引っかかりを認めた.
【介入と結果】
脳卒中片麻痺の歩行獲得に関して,2動作前型歩行は麻痺側下肢筋活動を増加させるといった報告や3動作揃え型歩行は安定性が高く,実用的であるという報告がある.今回,歩行獲得において下肢筋活動や歩行の安定性だけに重点を置くのではなく,活動的な性格や感覚障害が軽度,認知機能が保たれているなどの残存機能に着目し,2動作前型歩行の獲得を目標とした.また脳卒中治療ガイドラインでは発症後早期から装具を用いた積極的な歩行トレーニングを行うことが強く勧められており,症例は発症から早期であることや,患者背景を踏まえ,長下肢装具での2動作前型歩行練習を中心に実施した.X+67病日,下腿前傾角を促すために,背屈角度を8度に固定した両側支柱型短下肢装具での歩行練習を行った.X+107病日目,タマラックでの歩行練習を開始した.X+147病日目に歩行見守りとなった. 最終評価(X+147病日),SIASは68/76点,FMAは24/34点,TCTは100/100点,Brsは下肢Ⅲ,下肢の感覚は触覚・位置覚問題なし,MMTは麻痺側下肢2~3,非麻痺側下肢4であった.FIMは運動項目71/91点,認知項目33/35点,総合計104/126点であった.10m歩行21.4秒,TUG右回り26,1秒,左回り22.4秒であった.
【結論】
本症例において,先行研究をただ利用するだけでなく,患者背景や残存機能に着目して,早期から2動作前型歩行練習を実施したことで歩行が獲得できたと考える.一方,歩行の実用性としては十分とは言えず,歩行自立に向けた応用的な歩行練習が必要であると考える.
70代男性.X日左橋梗塞を発症し,右上下肢麻痺と構音障害を認めた.X+21病日目にリハビリテーション目的で当院へ転院した.右上下肢麻痺によりActivities of Daily Living (以下ADL)は介助が必要な状態であり,歩行も全介助であった.環境因子は3階建ての一軒家に住んでおり段差が多いことや,妻と同居していることが挙げられる.個人因子としては元々ジムやゴルフなど体を動かすことが好きであり,活動的な性格であった.
【評価とリーズニング】
初期評価(X+21病日)として, Stroke Impairment Assessment Stage(以下SIAS)は45/76点,Fugl-Meyer Assessment L/E Motor(以下FMA)は10/34点,Trunk Control Test(以下TCT)は61/100点,Brunnstrom Stage(以下Brs)は上肢Ⅳ・手指Ⅳ・下肢Ⅱ.下肢の感覚について触覚は問題なし,位置覚は軽度鈍麻. Manual Muscle Test(以下MMT)は麻痺側下肢1~2,非麻痺側股関節外転3,その他は4であった.Functional Independence Measure(以下FIM)は運動項目39/91点,認知項目31/35点,総合計70/126点であった.高次脳機能障害は分配性の注意障害を認めた.装具なし歩行では右initial contact(以下IC)での前足部接地,右loading response(以下LR)~mid stance(以下Mst)でのback knee・膝折れ,右swingでの前足部の引っかかりを認めた.
【介入と結果】
脳卒中片麻痺の歩行獲得に関して,2動作前型歩行は麻痺側下肢筋活動を増加させるといった報告や3動作揃え型歩行は安定性が高く,実用的であるという報告がある.今回,歩行獲得において下肢筋活動や歩行の安定性だけに重点を置くのではなく,活動的な性格や感覚障害が軽度,認知機能が保たれているなどの残存機能に着目し,2動作前型歩行の獲得を目標とした.また脳卒中治療ガイドラインでは発症後早期から装具を用いた積極的な歩行トレーニングを行うことが強く勧められており,症例は発症から早期であることや,患者背景を踏まえ,長下肢装具での2動作前型歩行練習を中心に実施した.X+67病日,下腿前傾角を促すために,背屈角度を8度に固定した両側支柱型短下肢装具での歩行練習を行った.X+107病日目,タマラックでの歩行練習を開始した.X+147病日目に歩行見守りとなった. 最終評価(X+147病日),SIASは68/76点,FMAは24/34点,TCTは100/100点,Brsは下肢Ⅲ,下肢の感覚は触覚・位置覚問題なし,MMTは麻痺側下肢2~3,非麻痺側下肢4であった.FIMは運動項目71/91点,認知項目33/35点,総合計104/126点であった.10m歩行21.4秒,TUG右回り26,1秒,左回り22.4秒であった.
【結論】
本症例において,先行研究をただ利用するだけでなく,患者背景や残存機能に着目して,早期から2動作前型歩行練習を実施したことで歩行が獲得できたと考える.一方,歩行の実用性としては十分とは言えず,歩行自立に向けた応用的な歩行練習が必要であると考える.