2:10 PM - 2:20 PM
[O-08-1] 重度運動麻痺、感覚脱失を呈した急性期右視床出血一例に対する感覚フィードバックを用いた下肢装具療法の効果
Keywords:脳卒中、装具療法
【症例紹介】
70歳代男性、病前ADLは自立。併存症は心房細動、高血圧症、脂質異常症。左上下肢の脱力と感覚障害を自覚し救急搬送。頭部CT検査にて右視床後外側を中心に内包、放線冠領域まで高吸収域を認め、右視床出血(CT分類Ⅱb、推定血腫量14ml)と診断された。発症21時間後の頭部CT検査にて血腫増大は認めず、血液検査所見でPT-INRは1.04であった。今回、重症脳卒中患者に対して早期離床に加え、歩行獲得に向けた重度運動麻痺および感覚障害への治療プログラムを立案したため結果とともに報告する。
【評価とリーズニング】
第2病日の評価は、血圧114/64mmHg、脈拍91bpm、JCSⅡ-10、注意障害・左半側空間無視を認め、下肢粗大筋力(右/左)MMT5/1レベル、FMA-LE 運動11点、FMA-LE 感覚0点、SCP3.75点、BBS2点、ABMSⅡ12点であった。起立・歩行は麻痺側下肢の支持性低下により困難であった。本症例においては頭部CT検査と血液検査所見の結果から再出血リスクは低く、早期離床は安全に実施可能であると推察した。一方、脳卒中患者においてKAFOを使用した歩行時の麻痺側下肢筋活動は最大随意筋活動と比較して高いことが報告されており、本症例の歩行再建にKAFOを用いた歩行練習は有用と考えられた。しかし、感覚障害を有する患者では運動時の発揮筋力の程度が不定になるとされ、また、感覚障害を有する場合の運動制御や動作学習において、芳賀や大沼らは他の感覚フィードバックの利用が有用であると述べていることから、本症例においても感覚脱失によって運動時の発揮筋力の程度が不定となり、運動制御や動作学習に他の感覚フィードバックが有用であると予想された。そのため、本症例では体性感覚以外の感覚情報を利用した早期からの下肢装具療法による麻痺側下肢筋力強化を実施し歩行再建を試みた。
【介入と結果】
第3病日より長下肢装具を使用し歩行練習を開始した。歩行練習時は麻痺側踵接地のタイミングで聴覚的キューを提示した。第135病日、JCSⅠ-0、下肢粗大筋力(右/左)MMT5/4-レベル、FMA-LE 運動29点、FMA-LE 感覚4点、SCP1.75点、BBS26点、6分間歩行40m、ABMSⅡ22点であった。歩行は短下肢装具と四点杖使用し3動作揃え型であり、速度0.16m/s、step長は平均0.27m、最大パフォーマンスは監視レベルであった。
【結論】
今回、右視床出血症例に対して下肢装具療法を早期から行い、脱失レベルの感覚障害の残存を認めたものの、麻痺側下肢筋力向上により監視歩行を獲得した。重度感覚障害を有する脳卒中患者において、感覚フィードバックも利用した早期からの歩行練習は歩行能力向上に有効であることが示唆された。
70歳代男性、病前ADLは自立。併存症は心房細動、高血圧症、脂質異常症。左上下肢の脱力と感覚障害を自覚し救急搬送。頭部CT検査にて右視床後外側を中心に内包、放線冠領域まで高吸収域を認め、右視床出血(CT分類Ⅱb、推定血腫量14ml)と診断された。発症21時間後の頭部CT検査にて血腫増大は認めず、血液検査所見でPT-INRは1.04であった。今回、重症脳卒中患者に対して早期離床に加え、歩行獲得に向けた重度運動麻痺および感覚障害への治療プログラムを立案したため結果とともに報告する。
【評価とリーズニング】
第2病日の評価は、血圧114/64mmHg、脈拍91bpm、JCSⅡ-10、注意障害・左半側空間無視を認め、下肢粗大筋力(右/左)MMT5/1レベル、FMA-LE 運動11点、FMA-LE 感覚0点、SCP3.75点、BBS2点、ABMSⅡ12点であった。起立・歩行は麻痺側下肢の支持性低下により困難であった。本症例においては頭部CT検査と血液検査所見の結果から再出血リスクは低く、早期離床は安全に実施可能であると推察した。一方、脳卒中患者においてKAFOを使用した歩行時の麻痺側下肢筋活動は最大随意筋活動と比較して高いことが報告されており、本症例の歩行再建にKAFOを用いた歩行練習は有用と考えられた。しかし、感覚障害を有する患者では運動時の発揮筋力の程度が不定になるとされ、また、感覚障害を有する場合の運動制御や動作学習において、芳賀や大沼らは他の感覚フィードバックの利用が有用であると述べていることから、本症例においても感覚脱失によって運動時の発揮筋力の程度が不定となり、運動制御や動作学習に他の感覚フィードバックが有用であると予想された。そのため、本症例では体性感覚以外の感覚情報を利用した早期からの下肢装具療法による麻痺側下肢筋力強化を実施し歩行再建を試みた。
【介入と結果】
第3病日より長下肢装具を使用し歩行練習を開始した。歩行練習時は麻痺側踵接地のタイミングで聴覚的キューを提示した。第135病日、JCSⅠ-0、下肢粗大筋力(右/左)MMT5/4-レベル、FMA-LE 運動29点、FMA-LE 感覚4点、SCP1.75点、BBS26点、6分間歩行40m、ABMSⅡ22点であった。歩行は短下肢装具と四点杖使用し3動作揃え型であり、速度0.16m/s、step長は平均0.27m、最大パフォーマンスは監視レベルであった。
【結論】
今回、右視床出血症例に対して下肢装具療法を早期から行い、脱失レベルの感覚障害の残存を認めたものの、麻痺側下肢筋力向上により監視歩行を獲得した。重度感覚障害を有する脳卒中患者において、感覚フィードバックも利用した早期からの歩行練習は歩行能力向上に有効であることが示唆された。