2:40 PM - 2:50 PM
[O-09-4] 回復期リハビリテーション病棟において腰部脊柱管狭窄症に対しASIAを用いて経時的評価を行った一症例
Keywords:回復期リハビリテーション、腰部脊柱管狭窄症
【症例紹介】
40歳代男性.元々屋内外独歩.数ヶ月前より腰痛,両下肢の痺れと知覚鈍麻あり.その後,症状増強し歩行困難となり入院.入院中,両下肢痛増強し排尿障害・直腸障害認め手術となった.後十字靭帯骨化を伴う腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニアによる馬尾損傷に対しL1/2/3/4/5片側進入両側除圧,L3/4椎間板ヘルニア摘出術施行.術後1ヶ月後に当院へ転院.
【評価とリーズニング】
術後1ヶ月,American Spinal Injury Association(以下ASIA)は痛覚スコア:100/112点,触覚スコア:99/112点,運動スコア:73/100点(上肢50/50点,下肢23/50点).痛覚・触覚ともにL4~S領域に軽度~重度鈍麻・脱失.徒手筋力検査(以下MMT)では腸腰筋2/3,殿筋群2/2,足関節・足趾筋は2/1~2であった.ADLは概ね自立しており,移動は車椅子自走自立.歩行は両下肢に両側支柱型短下肢装具着用し,両ロフストランド杖3動作揃え型軽介助.10歩行は32秒であり,実用性低下を認めた.
腰部脊柱管狭窄症馬尾型は,両側性に症状が出現し,手術療法が必要とされる.予後については手術適応と判断された患者において,罹患期間が長すぎると十分な改善が得られないことがあるといわれているが,十分なエビデンスが構築しておらず,術前の症状や罹患期間によって回復期間や改善度は異なるため予後予測が難しい.一方,脊髄損傷においてはASIAでの運動スコアの改善率は受傷3ヶ月までの改善度が大きいと報告されている.腰部脊柱管狭窄症も同じ脊髄疾患であるため術後3ヶ月までの運動機能改善があると予測し,ASIAを用い経時的な評価を行った.今回は手術施行日を0日として予測を行った.
【介入と結果】
術後2~3ヶ月は機能的な練習を中心に介入を行った.術後3ヶ月目,ASIAは痛覚スコア:102/112点,触覚スコア:101/112点,運動スコア:79/100点(下肢29/50点),MMTは腸腰筋3/3,殿筋群2/2,足関節・足趾筋は2/2~3となった.歩行は右下肢にシューホン型,左下肢にオルトップ型短下肢装具着用し,両ロフストランド杖2動作前型となった.10歩行は14秒.術後4ヶ月以降は動作練習中心の介入に移行した.術後6ヶ月目,ASIAは痛覚スコア・触覚スコア:102/112点,運動スコア:85/100点(下肢35/50点),MMTでは腸腰筋4/4,殿筋群2/3,足関節・足趾筋は3/3となった.歩行は右下肢に油圧制御継手型,左下肢にオルトップ型の短下肢装具着用し,片ロフストランド杖・独歩交互型となった.10歩行は11秒となり,歩行速度の改善を認めた.最終的には病棟内を片ロフストランド杖歩行自立,屋外歩行可能となり,実用的な歩行獲得に至り自宅退院となった.
【結論】
本症例において,術後3ヶ月で6点の運動スコアの向上を認め,脊髄損傷のエビデンスは一部適応できたと考えた.ただし,脊髄損傷と脊柱管狭窄症では受傷の原因,病態,治療の3つの相違点があり,ASIAを用いて予測するうえでは注意が必要である.
40歳代男性.元々屋内外独歩.数ヶ月前より腰痛,両下肢の痺れと知覚鈍麻あり.その後,症状増強し歩行困難となり入院.入院中,両下肢痛増強し排尿障害・直腸障害認め手術となった.後十字靭帯骨化を伴う腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニアによる馬尾損傷に対しL1/2/3/4/5片側進入両側除圧,L3/4椎間板ヘルニア摘出術施行.術後1ヶ月後に当院へ転院.
【評価とリーズニング】
術後1ヶ月,American Spinal Injury Association(以下ASIA)は痛覚スコア:100/112点,触覚スコア:99/112点,運動スコア:73/100点(上肢50/50点,下肢23/50点).痛覚・触覚ともにL4~S領域に軽度~重度鈍麻・脱失.徒手筋力検査(以下MMT)では腸腰筋2/3,殿筋群2/2,足関節・足趾筋は2/1~2であった.ADLは概ね自立しており,移動は車椅子自走自立.歩行は両下肢に両側支柱型短下肢装具着用し,両ロフストランド杖3動作揃え型軽介助.10歩行は32秒であり,実用性低下を認めた.
腰部脊柱管狭窄症馬尾型は,両側性に症状が出現し,手術療法が必要とされる.予後については手術適応と判断された患者において,罹患期間が長すぎると十分な改善が得られないことがあるといわれているが,十分なエビデンスが構築しておらず,術前の症状や罹患期間によって回復期間や改善度は異なるため予後予測が難しい.一方,脊髄損傷においてはASIAでの運動スコアの改善率は受傷3ヶ月までの改善度が大きいと報告されている.腰部脊柱管狭窄症も同じ脊髄疾患であるため術後3ヶ月までの運動機能改善があると予測し,ASIAを用い経時的な評価を行った.今回は手術施行日を0日として予測を行った.
【介入と結果】
術後2~3ヶ月は機能的な練習を中心に介入を行った.術後3ヶ月目,ASIAは痛覚スコア:102/112点,触覚スコア:101/112点,運動スコア:79/100点(下肢29/50点),MMTは腸腰筋3/3,殿筋群2/2,足関節・足趾筋は2/2~3となった.歩行は右下肢にシューホン型,左下肢にオルトップ型短下肢装具着用し,両ロフストランド杖2動作前型となった.10歩行は14秒.術後4ヶ月以降は動作練習中心の介入に移行した.術後6ヶ月目,ASIAは痛覚スコア・触覚スコア:102/112点,運動スコア:85/100点(下肢35/50点),MMTでは腸腰筋4/4,殿筋群2/3,足関節・足趾筋は3/3となった.歩行は右下肢に油圧制御継手型,左下肢にオルトップ型の短下肢装具着用し,片ロフストランド杖・独歩交互型となった.10歩行は11秒となり,歩行速度の改善を認めた.最終的には病棟内を片ロフストランド杖歩行自立,屋外歩行可能となり,実用的な歩行獲得に至り自宅退院となった.
【結論】
本症例において,術後3ヶ月で6点の運動スコアの向上を認め,脊髄損傷のエビデンスは一部適応できたと考えた.ただし,脊髄損傷と脊柱管狭窄症では受傷の原因,病態,治療の3つの相違点があり,ASIAを用いて予測するうえでは注意が必要である.