2:20 PM - 2:30 PM
[O-10-2] 大腿切断施行後に移乗動作を獲得した血液透析患者の一症例
Keywords:大腿切断、末梢動脈疾患
【症例紹介】
両大腿切断を施行されたものの,移乗が見守りで可能となった血液透析患者の一症例を経験したので報告する.
70代男性・透析歴7年で、既往歴は右大腿切断、完全房室ブロック,僧帽弁狭窄,合併症は糖尿病,末期腎不全であった.術前ADLは車椅子で自立しており,お風呂は訪問入浴を利用していた.主訴は周りに手伝ってもらわずに生活がしたいだった。X日に左足部の潰瘍により入院され,X+6日より,理学療法を開始した.しかし,壊死の進行により,中足骨切断,下腿切断を経て,X+93日に左大腿切断を施行された.
【評価とリーズニング】
中足骨切断前は,上肢可動域には制限認めず,MMTは肩関節屈曲,外転は左右共に4,肩甲帯下制は左右共に3-,体幹屈曲は2だった.疼痛は左足部の安静時痛(NRS 5/10),荷重時痛(NRS 8/10)であり,起居は自立,移乗はベッド柵を使用し,見守りであった.疼痛は潰瘍によるものだったため,左下肢,体幹,上肢の筋力運動を行い,潰瘍部への荷重を避けた動作練習を行った.しかし,壊死により,中足骨切断,下腿切断を施行された.下腿切断後は移乗が見守りでは困難となったため,スライドボードを使用した.しかし,創部の状態が悪化し,X+93日に左大腿切断を施行された.術直後は座位保持が困難となった.座位保持が不安定になった原因として,切断による重心の変化と考えた.移乗は,側方,前方からの移乗が不安定であったため、車椅子をベッドに直角につけ,後方へのいざり動作での移乗が安全と考えた.そのため,本人,家族と相談し,座位保持の獲得と,スライドボードを使用した移乗の獲得を目標とした.
【介入と結果】
大腿切断後は座位保持の獲得のため,筋力増強運動,重心移動練習を実施した.移乗動作獲得のため,体幹の回旋運動や,体幹側屈運動なども行った.介入後のMMTは肩関節屈曲,外転は左右共に4,肩甲帯下制は左右共に3+,体幹屈曲は3,側屈2+となった.動作面では,上肢を前方につき重心を前方に移動させることや,体幹の筋力増強により,座位保持は安定した.移乗は車椅子をベッドに直角につけ,後方へのいざり動作で移乗を行うことで,支持基底面が拡大し,安定した座位保持と移乗が可能となった.また,股関節や体幹だけでなく,移乗動作の反復や,車椅子の自走など上肢の筋力運動も行った.環境調整としては,ポータブルトイレを設置した.動作は後方から移乗を行い,トイレ上で骨盤の左右への挙上で下衣操作とふき取りを行い,戻る際は,トイレ上で回転し,後方からベッドへ移乗した.その他の環境が整っており,移乗を見守りで行えるようになったことで,自宅退院可能となった.
【結論】
両大腿切断により,移乗が困難となった血液透析患者を担当した.状態に応じた目標設定を行い,動作方法を工夫することで,起居移乗を見守りで行うことができた症例であった.
両大腿切断を施行されたものの,移乗が見守りで可能となった血液透析患者の一症例を経験したので報告する.
70代男性・透析歴7年で、既往歴は右大腿切断、完全房室ブロック,僧帽弁狭窄,合併症は糖尿病,末期腎不全であった.術前ADLは車椅子で自立しており,お風呂は訪問入浴を利用していた.主訴は周りに手伝ってもらわずに生活がしたいだった。X日に左足部の潰瘍により入院され,X+6日より,理学療法を開始した.しかし,壊死の進行により,中足骨切断,下腿切断を経て,X+93日に左大腿切断を施行された.
【評価とリーズニング】
中足骨切断前は,上肢可動域には制限認めず,MMTは肩関節屈曲,外転は左右共に4,肩甲帯下制は左右共に3-,体幹屈曲は2だった.疼痛は左足部の安静時痛(NRS 5/10),荷重時痛(NRS 8/10)であり,起居は自立,移乗はベッド柵を使用し,見守りであった.疼痛は潰瘍によるものだったため,左下肢,体幹,上肢の筋力運動を行い,潰瘍部への荷重を避けた動作練習を行った.しかし,壊死により,中足骨切断,下腿切断を施行された.下腿切断後は移乗が見守りでは困難となったため,スライドボードを使用した.しかし,創部の状態が悪化し,X+93日に左大腿切断を施行された.術直後は座位保持が困難となった.座位保持が不安定になった原因として,切断による重心の変化と考えた.移乗は,側方,前方からの移乗が不安定であったため、車椅子をベッドに直角につけ,後方へのいざり動作での移乗が安全と考えた.そのため,本人,家族と相談し,座位保持の獲得と,スライドボードを使用した移乗の獲得を目標とした.
【介入と結果】
大腿切断後は座位保持の獲得のため,筋力増強運動,重心移動練習を実施した.移乗動作獲得のため,体幹の回旋運動や,体幹側屈運動なども行った.介入後のMMTは肩関節屈曲,外転は左右共に4,肩甲帯下制は左右共に3+,体幹屈曲は3,側屈2+となった.動作面では,上肢を前方につき重心を前方に移動させることや,体幹の筋力増強により,座位保持は安定した.移乗は車椅子をベッドに直角につけ,後方へのいざり動作で移乗を行うことで,支持基底面が拡大し,安定した座位保持と移乗が可能となった.また,股関節や体幹だけでなく,移乗動作の反復や,車椅子の自走など上肢の筋力運動も行った.環境調整としては,ポータブルトイレを設置した.動作は後方から移乗を行い,トイレ上で骨盤の左右への挙上で下衣操作とふき取りを行い,戻る際は,トイレ上で回転し,後方からベッドへ移乗した.その他の環境が整っており,移乗を見守りで行えるようになったことで,自宅退院可能となった.
【結論】
両大腿切断により,移乗が困難となった血液透析患者を担当した.状態に応じた目標設定を行い,動作方法を工夫することで,起居移乗を見守りで行うことができた症例であった.