第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-11] 一般演題(補装具・疼痛・代謝①)

Sun. Jul 3, 2022 2:10 PM - 3:10 PM 会場7 (12階 1202会議室)

座長:宮下 創(JCHO星ヶ丘医療センター)

2:10 PM - 2:20 PM

[O-11-1] 人工膝関節全置換術後の経過における疼痛増悪に対し、経皮的末梢神経電気刺激療法の併用介入が有用であった症例

三浦 匠悟, 前田 旺久, 古賀 優之 (協和会病院理学療法科)

Keywords:人工膝関節全置換術(TKA)、経皮的末梢神経電気刺激(TENS)

【症例紹介】当院にて右人工膝関節全置換術(TKA)を施行された77歳の女性.術前ADLは自宅内車椅子移動でありベッド上中心の生活をされていた.術後2週より担当開始.疼痛(術前/術後2週)はNRSで,運動9/6,夜間-/4,SFMPQ2で129点/67点であり,TKAの施行による鎮痛が得られていると考えられた.術後2週の圧痛閾値(PPT)は,右膝内側31.67N,前腕43.67N,中枢性感作(CS)関連症状はCSI9で24点であった.

【評価とリーズニング】術後6週で病棟内は歩行器歩行見守り,NRSは運動4,PPTは膝58N,前腕67N,CSI9が14点と改善したが,夜間痛はNRS5と増悪傾向を認めた.術後8週にはNRSが運動4,夜間6,PPTは膝48.67N,前腕48.67N,CSI9は22点であり,夜間痛と罹患部位および遠隔部位のPPT,CS関連症状の増悪を認めた.SFMPQ2の項目別で分析したところ,「ずきんずきん」や「うずくような」といった項目がそれぞれ(5/10点),(5/10点)と高値であった.このような痛み表現は,通常の術後プロセスにおいて,経時的に改善される創部痛や関節痛が想起されるものであるが,術後8週においても改善が得られていなかった.膝および前腕のPPTが増悪していることやCSI9が高値であることから,痛みの要因に末梢/中枢性感作が関与していると考えられ,これらの病態を標的とする介入として,経皮的末梢神経電気刺激療法(TENS)を運動療法の補助的治療として追加した.

【介入と結果】機器はESPURGE(伊藤超短波社製)を使用した.疼痛部位は膝関節内側であったことから,スクレロトームに沿ってL3-4領域に電極を貼付し,周波数変調(1~100Hz),パルス幅100μs,電流は感覚閾値で最大耐性強度とした.実施直前/直後のPPTは右膝内側34N/66N,NRSは6/4であり,即時効果がみられたため,介入を継続した.術後10週ではNRSが運動3,夜間4,PPTは右膝66.33N,前腕60.33N,SFMPQ2は51点,CSI9は11点となった.術後12週で杖歩行自立となり,自宅退院に至った.

【結論】本症例は,TKA術後経過において運動時痛が改善した一方で,夜間痛が増悪した.術後6週から8週にかけては,罹患部位(膝)のPPTに加えて,遠隔部位(前腕)のPPTやCS関連症状の増悪がみられていたことから,痛みの病態に末梢/中枢性感作が関与していたと考えられる.これに対し,TENS実施直後には即時的にPPTの改善がみられ,長期的には夜間痛も再び改善傾向に至った.周波数を変調させたTENSは内因性オピオイドの放出や,下降性疼痛抑制経路を活性化すると考えられており,このようなメカニズムが本症例の鎮痛に寄与したと考えられる.