2:40 PM - 2:50 PM
[O-11-4] 急性小脳炎による立位障害に対し,hip strategyに着目して長下肢装具を用いた立位練習が有効であった一症例
Keywords:運動失調 、hip strategy
【症例紹介】
60歳代,男性。病前生活歴は独歩,ADL動作は自立していた。約X-1.5年にふらつきを自覚後,急性小脳炎と診断され当院へ入院しステロイドパルス療法を実施された。以降症状の寛解を認め自宅退院された。約X-0.5年より症状の再増悪を認め,四肢体幹失調を呈した。大量γグロブリン静注療法を3クール実施する目的で当院へ入院された。X-1日より入院され,Ⅹ日より理学療法を実施した。X+34日目に住宅型有料老人ホームへ退院された。今回,立位障害に対して長下肢装具を用いた立位練習を実施した結果,立位障害の改善に有効であった為、報告する。
【評価とリーズニング】
意識清明,認知機能は低下していた。指鼻指試験及び踵膝試験は両側ともに陽性,躯幹失調検査はstageⅢ,ロンベルグ試験は陰性であった。SARAは32.5点(立位:6点,歩行:8点など)であり,四肢体幹に重度の小脳性運動失調を呈していた。感覚検査では表在感覚,深部感覚に著明な左右差を認めなかった。徒手筋力検査でも著しい低下は認めなかった。基本動作は立位保持が中等度介助で左側後方への転倒リスクがあった。移乗動作は重度介助で左下肢支持となった際に動揺を強く認めていた。歩行は全介助であった。BBSは3点,FIM運動項目は計14点であり,立位障害や日常生活動作の自立度が顕著に低下していた。主訴は立位,移乗動作で怖いであった。Needsはトイレ動作の介助量軽減とした。目標はトイレ動作に必要な立位保持,移乗動作の介助量軽減と設定した。
本症例は急性小脳炎により運動失調を呈した結果、立位障害に繋がったと考えた。立位姿勢は骨盤帯の左側偏移があり、両股関節の全方向への動揺と骨盤帯の側方動揺を認めた。また体幹前傾位となり両上肢の依存性が高かった。立位バランスを制御する為にhip strategyを用いていると考え,股関節失調が立位障害に対して直接的な要因と考えられた。
【介入と結果】
多部位に渡る運動失調に対して両側長下肢装具を装着し,下部体幹や両股関節の動揺の制動を目的に立位練習を実施した。上記訓練に加えて左下肢の支持性を高める為にstep練習を実施した。介入33日目,指鼻指試験及び踵膝試験,躯幹失調検査,ロンベルグ試験に変化は認めなかった。SARAは27.5点(立位:5点,歩行7点など)となり運動失調の軽減を認めた。BBSが4点(坐位保持+1点)となり,坐位バランス能力が向上した。立位保持は軽介助となった。FIM運動項目は退院時15点(車椅子移乗+1点)となり,移乗動作の介助量が軽減した。
【結論】
多部位に渡る運動失調を呈した症例に対し,長下肢装具を用いて股関節の制動に着目した介入により立位保持や移乗動作の介助量軽減に繋がった。本症例における経験から,小脳性運動失調による立位障害に対して長下肢装具を用いた立位練習の有効性が示唆された。
60歳代,男性。病前生活歴は独歩,ADL動作は自立していた。約X-1.5年にふらつきを自覚後,急性小脳炎と診断され当院へ入院しステロイドパルス療法を実施された。以降症状の寛解を認め自宅退院された。約X-0.5年より症状の再増悪を認め,四肢体幹失調を呈した。大量γグロブリン静注療法を3クール実施する目的で当院へ入院された。X-1日より入院され,Ⅹ日より理学療法を実施した。X+34日目に住宅型有料老人ホームへ退院された。今回,立位障害に対して長下肢装具を用いた立位練習を実施した結果,立位障害の改善に有効であった為、報告する。
【評価とリーズニング】
意識清明,認知機能は低下していた。指鼻指試験及び踵膝試験は両側ともに陽性,躯幹失調検査はstageⅢ,ロンベルグ試験は陰性であった。SARAは32.5点(立位:6点,歩行:8点など)であり,四肢体幹に重度の小脳性運動失調を呈していた。感覚検査では表在感覚,深部感覚に著明な左右差を認めなかった。徒手筋力検査でも著しい低下は認めなかった。基本動作は立位保持が中等度介助で左側後方への転倒リスクがあった。移乗動作は重度介助で左下肢支持となった際に動揺を強く認めていた。歩行は全介助であった。BBSは3点,FIM運動項目は計14点であり,立位障害や日常生活動作の自立度が顕著に低下していた。主訴は立位,移乗動作で怖いであった。Needsはトイレ動作の介助量軽減とした。目標はトイレ動作に必要な立位保持,移乗動作の介助量軽減と設定した。
本症例は急性小脳炎により運動失調を呈した結果、立位障害に繋がったと考えた。立位姿勢は骨盤帯の左側偏移があり、両股関節の全方向への動揺と骨盤帯の側方動揺を認めた。また体幹前傾位となり両上肢の依存性が高かった。立位バランスを制御する為にhip strategyを用いていると考え,股関節失調が立位障害に対して直接的な要因と考えられた。
【介入と結果】
多部位に渡る運動失調に対して両側長下肢装具を装着し,下部体幹や両股関節の動揺の制動を目的に立位練習を実施した。上記訓練に加えて左下肢の支持性を高める為にstep練習を実施した。介入33日目,指鼻指試験及び踵膝試験,躯幹失調検査,ロンベルグ試験に変化は認めなかった。SARAは27.5点(立位:5点,歩行7点など)となり運動失調の軽減を認めた。BBSが4点(坐位保持+1点)となり,坐位バランス能力が向上した。立位保持は軽介助となった。FIM運動項目は退院時15点(車椅子移乗+1点)となり,移乗動作の介助量が軽減した。
【結論】
多部位に渡る運動失調を呈した症例に対し,長下肢装具を用いて股関節の制動に着目した介入により立位保持や移乗動作の介助量軽減に繋がった。本症例における経験から,小脳性運動失調による立位障害に対して長下肢装具を用いた立位練習の有効性が示唆された。