第34回大阪府理学療法学術大会

Presentation information

Olal session

事前公開

[O-13] 一般演題(運動器⑤)

Sun. Jul 3, 2022 3:15 PM - 4:00 PM 会場4 (10階 1009会議室)

座長:今岡 真和(大阪河﨑リハビリテーション大学)

3:45 PM - 3:55 PM

[O-13-4] 当院にて大腿骨骨転移に対し髄内釘治療を施行された患者の歩行能力の調査

加藤 祐司1, 田宮 大也1,2, 木下 翔太1, 小菅 友里加1, 中橋 玲那1, 鈴木 昌幸1, 伊藤 公美子1, 吉川 正起1, 池田 聖児1 (1.大阪国際がんセンターリハビリテーション科, 2.大阪国際がんセンター骨軟部腫瘍科)

Keywords:骨転移、髄内釘

【背景と目的】
がんの骨転移による切迫骨折や病的骨折に対して、除痛及び予防的、治療目的のために髄内釘治療が選択されることがある。髄内釘治療後はリハビリテーションが必要となるが、骨転移を有する進行がん患者では病状悪化による身体機能の低下が生じる場合や病的骨折を生じる可能性があるため、外傷性骨折に対する髄内釘治療と異なる点が多くある。そこで今回、骨転移に対する髄内釘治療後の活動能力や歩行能力、術後の病的骨折の有無を後方視的に調査し、骨転移患者に対するリハビリテーションを再検討した。
【方法】
対象は2016年から2020年までに大腿骨骨転移に対し、当院にて髄内釘治療を施行された14例である。調査項目は年齢、性別、原発腫瘍、術後歩行能力、術前Performance status(以下PS)、術後1ヶ月のPSとした。PSは0-4の5段階に分類され、0は全く問題なく活動ができる、1は歩行及び軽作業が可能、2歩行は可能だが作業は困難、3は限られた身の回りのことしかできない、4は終日臥床である。歩行能力は療養生活で利用している歩行補助具を調査した。
【結果】
対象の年齢中央値65 (38-75) 歳、男性10例、女性4例であった。原発腫瘍は乳がん3例、肺がん2例、悪性リンパ腫1例、多発性骨髄腫1例、直腸がん1例、食道がん1例、膵臓がん1例、肝内胆管がん1例、骨軟部腫瘍3例であった。術前PSは1:4例、2:5例、3:2例、4:3例であった。PS3-4の対象は術前に病的骨折や切迫骨折による疼痛のため活動困難となりADLに支障をきたしていた。術後、全ての対象において骨破壊の程度に応じた荷重指示がされており、術後すぐに全荷重が可能であったのは3例であった。その他の対象では整形外科医師と協議しながら段階的に荷重を開始した。術後1ヶ月には独歩2例、杖歩行1例、片松葉杖歩行2例、両松葉杖歩行2例、歩行器歩行3例まで獲得することが可能となり、歩行練習等による病的骨折も認めなかった。一方で、術後に病状が悪化して死亡する症例もあり、術後1ヶ月のPSでは1:5例、2:4例、4:5例であった。
【結論】
骨転移に対する髄内釘治療後にリハビリテーションを施行することで活動性及びADLを改善することが期待できる一方、がんの病状悪化による身体機能の低下や骨転移の増悪による病的骨折などのリスク管理が必要となる。そのため、がんの病勢や日々の臨床データ、疼痛の状況などを医師や看護師に確認しながらリスク管理の下、適切なリハビリテーションや歩行補助具の選定を実施することで、多くの症例では歩行が可能となった。このことから進行がん患者にとって残された時間の中で歩行などの活動性の高いADLを獲得できることは意義のあることであり、理学療法士としても非常に重要と考えられる。