第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-15] 一般演題(介護・学校・地域①)

Sun. Jul 3, 2022 3:15 PM - 4:15 PM 会場7 (12階 1202会議室)

座長:北川 智美(四條畷学園大学)

4:05 PM - 4:15 PM

[O-15-6] 歩行獲得に難渋した脛骨近位端・腓骨頭骨折の一症例~歩行持久性に着目して~

岩根 弘人, 井口 奈保美, 東山 学史, 花崎 太一 (大阪回生病院リハビリテーションセンター)

Keywords:脛骨近位端骨折、腓骨頭骨折

【症例紹介】【背景と目的】
今回,自転車転倒後,右脛骨近位端と腓骨頭骨折にて観血的骨接合術を施行した70代女性の症例を担当した.術後2週間ニーブレース固定,その後膝関節屈曲90°までの制限下で関節可動域練習開始.荷重は術後6週間の免荷後,1/2荷重より実施.免荷期間には循環改善目的に徒手療法,患部近位関節も含めた可動域練習,筋力増強練習,patellar mobilizationを実施した.カナダ作業遂行測定(以下COPM)では,長距離歩行の獲得が聴取された.骨折部位より膝関節,足関節機能への影響に着目し治療した結果,歩行能力の向上,COPM,健康関連QOL評価(以下SF-36v2)において改善を得た為報告する.
【評価とリーズニング】【方法】
術後9週全荷重開始を初期評価,術後13週理学療法終了時を最終評価とした.COPM(重要度・遂行度・満足度の順で表記)において,「スーパーまで歩いて買い物をする(500m)」(10・1・1)を聴取.疼痛なし.周径(膝蓋骨直上, 右/左)41.0㎝/37.0㎝.関節可動域測定(以下ROM-t, 右/左, 単位°)膝関節伸展-10/0,足関節背屈5/15,外返し0/10.徒手筋力検査(以下MMT,右/左)膝関節伸展3/4,足関節底屈2/4,外返し2/3,内返し2/3.筋緊張検査(触診,右下肢)では大腿直筋,ハムストリングス,腓骨筋,後脛骨筋,腓腹筋に過緊張.膝蓋骨アライメント評価で左側に対し右膝蓋骨の上方偏位.舟状骨高(非荷重/荷重)右4.0㎝/2.3㎝,左4.3㎝/2.8㎝.歩行右立脚期において常時膝関節軽度屈曲位を呈し,LR~MStにて膝関節外反,MSt~TStでは股関節伸展が乏しく,体幹前傾の代償を認めた.左立脚支持時間に比べて,右側は短縮.10m歩行テスト22.2秒21歩 歩行率0.95.最大連続歩行距離50mで,大腿前面に疲労感の訴えがあった(修正Borg指数5.0).
本症例は,骨折や術侵襲の影響から膝・足関節双方に問題を認めた.膝関節は,大腿直筋,ハムストリングス,腓腹筋の過緊張および膝蓋骨可動性低下にて伸展ROM制限,伸展筋力低下が生じていた.足関節では腓骨筋や後脛骨筋の損傷による後足部可動性,中足部の安定性低下を呈した.これらが,歩行能力の低下と疲労感出現の一因であると推察した.
【介入と結果】【結果】
治療は,免荷期間の理学療法を継続しながら,足部機能にはアーチパッドを処方した中で荷重下での運動療法を段階的に実施した.
結果(右下肢のみ記載),周径37.5㎝.ROM-t 膝関節伸展0,足関節背屈15,外返し5.MMT 膝関節伸展4,足関節底屈3,内返し3,外返し3.筋の過緊張軽減.膝蓋骨アライメントは左右差なし.10m歩行テストは8.3秒12歩 歩行率1.45,6分間歩行テストは370mで修正Borg指数1.COPMは10・5・5へと改善,SF-36v2も全ての項目が向上した.
【結論】
膝関節,足関節の双方へ治療展開を図った.歩行能力が向上することにより,COPMで聴取した長距離歩行獲得に繋がり,QOLの向上に寄与したものと考える.