第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-16] 一般演題(脳卒中⑤)

Sun. Jul 3, 2022 4:00 PM - 4:45 PM 会場3 (10階 1008会議室)

座長:木下 篤(さくら会病院)

4:00 PM - 4:10 PM

[O-16-1] 独歩自立に至った延髄梗塞後運動失調を呈した一症例  -骨盤の加速度平均、歩行周期変動係数の経時的変化-

中桐 真依子1, 伊藤 拓海2, 森髙 良樹1 (1.森之宮病院リハビリテーション部, 2.ボバース記念病院リハビリテーション部)

Keywords:歩行、運動失調

【症例紹介】70代男性。延髄右側及び正中部の脳梗塞後、発症22病日目に当院回復期病棟へ入院となった。入院時、左上下肢及び体幹に運動失調を認め、歩行器歩行に介助を要したが、発症144病日目に屋内独歩自立を獲得した。歩行自立に至るまでの骨盤の左右成分の加速度平均及び歩行周期変動係数の特徴を報告する。
【評価とリーズニング】入院時ADLは、FIM90/126(運動59/91、認知31/35)、運動失調評価はScale for the assessment and rating of ataxia(SARA)13点、麻痺側運動機能はFugl-Meyer Assessment(FMA)下肢28/34、体幹機能はTrunk Impairment Scale(TIS)7/23、バランス機能はBerg Balance Scale(BBS)18/56であった。加速度計(TSND121、ATR社)をT7棘突起部、L4棘突起部、左腓骨頭直下の3か所に装着し、歩行時の加速度の測定を計3回実施した(歩行器歩行介助期:発症40病日、歩行器歩行自立期:発症97病日、独歩自立期:発症144病日)。
【介入と結果】歩行器歩行介助期から歩行器歩行自立期にかけて、理学療法介入は背臥位での下肢筋力増強、骨盤の選択運動、座位・立位バランス及び歩行器歩行練習を行った。FIMは104/126(運動72/91、認知32/35)、SARAは10.5点、FMA下肢28/34、TISは10/23、BBSは44/56となった。加速度計の結果では、骨盤の左右成分の加速度平均が減少した(2.1m/secから0.87m/sec)。歩行器歩行自立期から独歩自立期にかけて、理学療法介入は立位バランス練習、腹臥位・四つ這い間の姿勢変換練習、ノルディック杖歩行練習及び独歩練習を行った。FIMは118/126(運動83/91、認知35/35)、SARAは6点、FMA下肢は29/34、TISは13/23、BBSは50/56となった。加速度計の結果では、歩行周期変動係数が減少した(12.4%から2.6%)。
【結論】歩行器歩行介助期から歩行器歩行自立期にかけて、TIS下位項目の動的座位バランス項目が向上し、骨盤の左右成分の加速度平均が減少したことからも、骨盤の安定性向上が歩行器歩行自立に寄与したと考察した。脳卒中片麻痺者の歩行自立度の評価において、歩行周期の変動係数を用いた報告がみられ(Takasugiら、2000)、独歩を獲得した運動失調患者の変動係数は3.17%と報告されている(Ellen ら、2018)。歩行器歩行自立期から独歩自立期にかけては変動係数が2.6%と減少し、歩行の律動性が得られたことが、屋内独歩自立に寄与したと考察した。