第34回大阪府理学療法学術大会

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Olal session

事前公開

[O-18] 一般演題(呼吸②)

Sun. Jul 3, 2022 4:00 PM - 4:45 PM 会場6 (12階 特別会議場)

座長:山科 吉弘(藍野大学)

4:00 PM - 4:10 PM

[O-18-1] 慢性閉塞性肺疾患患者における軽度認知障害の有無による臨床的測定指標の差異の検証

小谷 将太1,2, 大庭 潤平1, 濃添 建男1, 奥田 みゆき1, 前倉 俊也1, 堀江 淳2 (1.大阪複十字病院包括的呼吸リハビリテーションセンター, 2.京都橘大学大学院健康科学研究科)

Keywords:慢性閉塞性肺疾患、軽度認知障害

【症例紹介】【背景と目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のsystemic effects「全身的な影響」の一つに認知機能障害がある。COPD患者は非COPD患者に比べ、認知機能障害が4倍高く発生する可能性があるとされており、得に、前頭葉機能の低下が起こりやすいと考えられている。我々の臨床上においても、コミュニケーション上に何ら問題を感じないものの、指導の定着が困難な症例を頻繁に経験する。認知機能障害の前段階として、軽度認知障害(MCI)という概念があるが、COPD患者に対するMCIに関しては十分な検証がされていない。そこで本研究の目的は、COPD患者におけるMCIの有無による臨床的測定指標の差異を検討することとした。

【評価とリーズニング】【方法】
研究デザインは横断研究とし、調査期間は2018年4月から2021年12月までとした。対象は、当院外来呼吸リハビリテーションに登録している安定期COPD患者57例であった。2群の群分けは、MoCA-Jの点数が26点未満をMCI群、MoCA-Jの点数が26点以上を非MCI群とした。測定指標は、年齢、性別、mMRC scale、在宅酸素療法(HOT)の有無、教育歴、喫煙歴、GOLD病期、カテゴリー、身体組成(筋量、脂肪量、体脂肪率、基礎代謝量、骨格筋量指数)、筋力(握力、膝伸展筋力)、栄養(MNA)、運動耐容能(ISWD)、健康関連QOL(CAT、SGRQの合計点と各項目)、精神面(HADS)、日常生活(NRADLの合計点と各項目)、身体活動量(歩数、歩行時間、エクササイズ量(Ex量)、活動強度)、認知機能(MMSE、MoCA-Jの合計点と各項目)、前頭葉機能(FABの合計点と各項目)とした。除外基準は、MMSEが26点未満の者とした。統計学的分析方法として、MCI群と非MCI群の差の比較は対応のないt検定およびχ2独立性検定にて分析した。有意水準は5%とした。

【介入と結果】【結果】
MCI群は34例、非MCI群は23例であった。MoCA-JとFABはMoCA-Jの合計点、視空間 / 遂行機能、注意、言語、抽象概念、遅延再生(p<0.01)、命名(p=0.03)、FABの合計点、類似性、運動系列、葛藤指示(p<0.01)が非MCI群よりMCI群が有意に低値を認めた。他の指標に有意差は認められなかった。

【結論】
我々のCOPD患者におけるMCIの合併は、「コミュニケーション上に問題ないが、ADL指導やアクションプランを処方しても定着しにくい」という印象である。また、COPD患者のMCIの特徴は、「遅延再生」の項目が低下していると仮説を立てていた。しかし、MCI群は、MoCA-Jの見当識以外の項目、FABの合計点、類似性、運動系列、葛藤指示の項目が有意に低値であった。これらより、COPD患者においてMCIの合併は遅延再生だけでなく、注意や転換などいった脳機能が低下し始めいていると推察した。よって、COPD患者のMCI合併には指導時の阻害因子となる可能性があるため、詳細な評価が必要になると考えている。