4:10 PM - 4:20 PM
[O-18-2] 腹臥位療法により労作時呼吸困難が改善したCOVID-19治療後患者の症例
Keywords:COVID-19、労作時呼吸困難
【症例紹介】
COVID-19による肺炎を発症した80代女性.一時はリザーバーマスク15L/分が必要な状態であったが,治療により経鼻カニューレ1L/分となった.しかし動作時のSpO2低下と呼吸困難が著明であり自宅退院が困難なため,ADL向上を目的に当院地域包括ケア病棟に転院となる.入院前の屋内外移動は独歩自立し,家事は全て行っていた.
【評価とリーズニング】
初期評価時,胸部CTにて両背側の胸膜直下にすりガラス影を認め,聴診では低音性連続音と捻髪音を聴取した.経鼻カニューレ1L/分でのSpO2と呼吸数は,安静臥位時92%と34回/分,起き上がり動作後の座位時80%と41回/分となり,動作時Borg Scale19だった.6分間歩行試験は実施困難でFIMは55点だった.本症例において,起き上がり動作後の座位時でもSpO2低下による呼吸困難がADL獲得の妨げとなっていた. 急性期のCOVID-19による呼吸不全患者を腹臥位にすると,背側の換気が約20%改善し,肺全体の換気と血流のマッチングが増加したとの報告がある.さらに肺病変のない健常者でも,機能的残気量が増加したと報告されている.本症例は両背側にすりガラス影を認めたため,背側の換気改善が必要であり,急性期を脱したCOVID-19治療後患者の呼吸状態改善に,腹臥位療法が適応と考えた.加えて,SpO2の改善に併せた運動療法の実施が必要だと考えた.呼吸器疾患の運動療法の効果として一定の運動量,仕事量に対する換気需要の減少,嫌気性閾値上昇があると言われている.運動療法は,負荷量をSpO290%以上かつBorg Scale13を超えない範囲で実施した.
【介入と結果】
背側の換気を促すため,当院転院時から20分の腹臥位療法と呼気の指導を実施した.動作時のSpO2の低下に対しては医師の指示のもと,経鼻カニューレ2L/分に増量し,低負荷での下肢筋力増強を中心に運動療法を実施した.転院4日目には歩行練習を開始し,運動耐容能を評価しながら,転院14日目より抵抗運動を追加した.最終評価時は,低音性連続音と捻髪音が消失した.経鼻カニューレ1L/分でのSpO2は安静臥位と起き上がり動作後の座位時で97%,歩行後94%で,呼吸数は安静時17回/分,歩行後22回/分,Borg Scale7で労作時呼吸困難は消失した.6分間歩行試験は約250mで退院時FIMは122点となった.
【結論】
本症例では労作時呼吸困難が,ADL獲得の妨げとなっていた.SpO2の改善を目的に腹臥位療法を実施し,背側の換気改善を図った.SpO2が改善し運動療法が可能となったことで,労作時呼吸困難が消失し,ADL向上に繋がったと考える.
COVID-19による肺炎を発症した80代女性.一時はリザーバーマスク15L/分が必要な状態であったが,治療により経鼻カニューレ1L/分となった.しかし動作時のSpO2低下と呼吸困難が著明であり自宅退院が困難なため,ADL向上を目的に当院地域包括ケア病棟に転院となる.入院前の屋内外移動は独歩自立し,家事は全て行っていた.
【評価とリーズニング】
初期評価時,胸部CTにて両背側の胸膜直下にすりガラス影を認め,聴診では低音性連続音と捻髪音を聴取した.経鼻カニューレ1L/分でのSpO2と呼吸数は,安静臥位時92%と34回/分,起き上がり動作後の座位時80%と41回/分となり,動作時Borg Scale19だった.6分間歩行試験は実施困難でFIMは55点だった.本症例において,起き上がり動作後の座位時でもSpO2低下による呼吸困難がADL獲得の妨げとなっていた. 急性期のCOVID-19による呼吸不全患者を腹臥位にすると,背側の換気が約20%改善し,肺全体の換気と血流のマッチングが増加したとの報告がある.さらに肺病変のない健常者でも,機能的残気量が増加したと報告されている.本症例は両背側にすりガラス影を認めたため,背側の換気改善が必要であり,急性期を脱したCOVID-19治療後患者の呼吸状態改善に,腹臥位療法が適応と考えた.加えて,SpO2の改善に併せた運動療法の実施が必要だと考えた.呼吸器疾患の運動療法の効果として一定の運動量,仕事量に対する換気需要の減少,嫌気性閾値上昇があると言われている.運動療法は,負荷量をSpO290%以上かつBorg Scale13を超えない範囲で実施した.
【介入と結果】
背側の換気を促すため,当院転院時から20分の腹臥位療法と呼気の指導を実施した.動作時のSpO2の低下に対しては医師の指示のもと,経鼻カニューレ2L/分に増量し,低負荷での下肢筋力増強を中心に運動療法を実施した.転院4日目には歩行練習を開始し,運動耐容能を評価しながら,転院14日目より抵抗運動を追加した.最終評価時は,低音性連続音と捻髪音が消失した.経鼻カニューレ1L/分でのSpO2は安静臥位と起き上がり動作後の座位時で97%,歩行後94%で,呼吸数は安静時17回/分,歩行後22回/分,Borg Scale7で労作時呼吸困難は消失した.6分間歩行試験は約250mで退院時FIMは122点となった.
【結論】
本症例では労作時呼吸困難が,ADL獲得の妨げとなっていた.SpO2の改善を目的に腹臥位療法を実施し,背側の換気改善を図った.SpO2が改善し運動療法が可能となったことで,労作時呼吸困難が消失し,ADL向上に繋がったと考える.