第34回大阪府理学療法学術大会

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事前公開

[P-02] ポスター演題②(卒業研究演題)

Sun. Jul 3, 2022 2:10 PM - 3:10 PM 会場8 (12階 12Fホワイエ)

座長:田中 貴広(藍野大学)

2:10 PM - 2:22 PM

[P-02-1] 呼気抵抗による脳循環動態の影響について~呼吸動態の変化と脳血流量の関連~ 【卒業研究】

植田 健斗1,2, 松永 玲奈1, 栗巣 真緒1, 堀 竜次3 (1.森ノ宮医療大学保健医療学部, 2.八尾徳洲会総合病院 リハビリテーション科, 3.森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科)

Keywords:呼気抵抗、呼吸動態

【背景と目的】
  慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者には脳機能低下や脳血管障害を発症することが報告されているが、その機序は明確にされていない。またCO2は脳血管を拡張することが報告されている。その為、本研究では、呼気抵抗による換気制限が呼吸動態と脳血流量の変動に与える影響について検討した。
【対象と方法】
 対象は健常男性9名(20.7±0.4歳)とした。方法は安静5分間、運動5分間、安静5分間とし、コントロール群(Cont群)と呼吸筋トレーニング機器を用いた呼気抵抗群(ER群)とした。運動負荷は自転車エルゴメーターを用い、嫌気性代謝閾値の1分前の強度にて定常負荷を行った。呼吸応答は呼気ガス分析装置(AE-310Sミナト医科学社製)を用い、ETCO、air trappingの指標であるTVI-TVEを測定した。脳血流は近赤外線酸素モニタ装置(NIRO-200NX浜松ホトニクス社製)を用いて前頭部の総ヘモグロビン(cHb)を計測した。
統計解析はEZR(Ver.1.32)を用い、TVI-TVEのCont群とER群の比較は、Wilcoxon符号付順位和検およびpaired-t検定で行った。また、Cont群および呼気抵抗群でのcHbの比較は2元配置反復測定分散分析を用いた。ETCO2とcHbの関係は Pearsonの積立相関係数を算出した。有意水準は5%とした。
【結果】
 TVI-TVEについて、Cont群に比べER群が運動中、運動前、運動後もER群が高かった(p<0.01)。運動負荷に伴うcHbの変動はCont群とER群にて異なる変動パターンを示し、ER群では運動前5.01±4.11μmol、運動中8.41±6.50μmol、運動後8.22±5.96μmolと運動中にcHbの上昇を認め、運動終了後も維持された(p=0.046)。ETCO2とcHbの関係は、Cont群では相関は見られず、ER群では運動中ETCO2 6.10±0.63%、cHb8.41±6.50μmol(r=0.68,p=0.06)、運動後ETCO2 5.37±0.72%、cHb8.22±5.96μmol(r=0.77,p=0.015)であった。
【結論】
 本研究では、呼気抵抗によりTVI―TVEの上昇、つまり、air trappingが生じ、運動後も脳血流量(cHb)が高い状態が維持され、ER群では運動後のETCO2とcHbに相関をみとめた。小河らによるとCO2が貯留した場合、肺による換気調節と脳血管拡張によるCO2のwash outによる脳血流調節が働くと言われている。今回、呼気抵抗により換気調節が障害されたため、脳血管拡張に伴う脳血流調節が優位となり脳血流のオーバーフローが生じたと考える。脳血流のオーバーフローは脳圧を亢進するため、脳に対する負荷の増大に注意する必要があると考える。