3:27 PM - 3:39 PM
[P-03-2] 左被殻出血後の重度右片麻痺により歩行獲得が困難であった症例に対する再考
Keywords:被殻出血、重度脳卒中患者
【症例紹介】
60歳代男性。左被殻出血により意識障害、右上下肢重度片麻痺、失語症を認めた。翌日、内視鏡的部分血種除去術を施行。発症1か月、リハビリテーション目的に当院入院。家族の希望は屋内生活自立。
【評価とリーズニング】
当院入院時のCT上、左被殻全域を始め、後方は内包後脚、視床の中央から後方にかけて、前方は側脳室前角よりも前方に及ぶまで、高さは視床の腹側から放線冠、半卵円中心までにわたる広範な低吸収域がみられた。初期評価はStroke Impairment Assessment SetのSIAS-motor全項目0、体性感覚は上下肢脱失。Scale for Contraversive Pushing(SCP)は4(座位1.75、立位2.25)で姿勢定位障害もみられた。Berg Balance Scale(BBS)は2。Functional Independence Measure(FIM)は運動20、認知13。座位保持は見守り、補装具無しの立位保持は困難であった。歩行は長下肢装具(KAFO)を用いた後方介助歩行にて麻痺側立脚期での骨盤swayや非麻痺側外転接地、体幹前傾がみられ、運動麻痺やフィードフォワード障害、皮質網様体路障害、姿勢定位障害によるものと考えた。加えて、言語機能や注意機能、遂行機能の障害が著しく、前頭連合野との連絡線維の障害によるものと考えた。これにより、運動学習の阻害・遅延が生じるのではないかと考えた。一方、脊髄、脳幹、小脳自体は損傷しておらず、脊髄小脳路を介した筋活動や網様体脊髄路の賦活による姿勢制御の学習が歩行獲得に重要ではないかと考えた。目標は屋内杖歩行見守りとした。
【介入と結果】
まず、KAFOを用いて立位練習や後方介助での前型歩行練習を実施した。発症4か月、Gait Judge Systemにて麻痺側の大腿直筋や腓腹筋に微弱な筋活動もみられ、semi-KAFOでの側方介助歩行を併用した。また、歩行距離が80m程度と短かった為、200m程度に増加させた。発症6か月でT-cane+短下肢装具(AFO)に移行したが、骨盤swayや麻痺側のtoe clearance低下がみられ、骨盤介助を継続した。また、骨盤後傾による麻痺側の努力的なswingがみられ、疲労蓄積しやすく、歩行距離は100m程度になっていた。最終的にT-caneとAFOの2動作前型歩行となったが、ADLは居室内杖歩行見守りとなり目標は達成せず、発症6か月半で自宅退院となった。最終評価はSIAS-motor下肢2-2-0、体性感覚脱失、SCPは0、BBSは34で360°回転は困難であった。FIMは運動58、認知23で移動(歩行)は1のままとなった。
【結論】
歩行では骨盤swayやtoe clearance低下、努力的なswingが残存し、安全性は低く、屋内歩行獲得に至らなかった。原因として、歩行練習の中で十分な距離を得られなかったことや過剰な介助により脊髄小脳路を介したフィードバック(FB)や誤差修正の機会の損失を招いた可能性が考えられた。さらに、練習の中で言語によるFBや意識的な課題反復の割合が多く、前頭連合野の機能が低下している本症例にとって余計な混乱を招いた可能性も考えられた。
60歳代男性。左被殻出血により意識障害、右上下肢重度片麻痺、失語症を認めた。翌日、内視鏡的部分血種除去術を施行。発症1か月、リハビリテーション目的に当院入院。家族の希望は屋内生活自立。
【評価とリーズニング】
当院入院時のCT上、左被殻全域を始め、後方は内包後脚、視床の中央から後方にかけて、前方は側脳室前角よりも前方に及ぶまで、高さは視床の腹側から放線冠、半卵円中心までにわたる広範な低吸収域がみられた。初期評価はStroke Impairment Assessment SetのSIAS-motor全項目0、体性感覚は上下肢脱失。Scale for Contraversive Pushing(SCP)は4(座位1.75、立位2.25)で姿勢定位障害もみられた。Berg Balance Scale(BBS)は2。Functional Independence Measure(FIM)は運動20、認知13。座位保持は見守り、補装具無しの立位保持は困難であった。歩行は長下肢装具(KAFO)を用いた後方介助歩行にて麻痺側立脚期での骨盤swayや非麻痺側外転接地、体幹前傾がみられ、運動麻痺やフィードフォワード障害、皮質網様体路障害、姿勢定位障害によるものと考えた。加えて、言語機能や注意機能、遂行機能の障害が著しく、前頭連合野との連絡線維の障害によるものと考えた。これにより、運動学習の阻害・遅延が生じるのではないかと考えた。一方、脊髄、脳幹、小脳自体は損傷しておらず、脊髄小脳路を介した筋活動や網様体脊髄路の賦活による姿勢制御の学習が歩行獲得に重要ではないかと考えた。目標は屋内杖歩行見守りとした。
【介入と結果】
まず、KAFOを用いて立位練習や後方介助での前型歩行練習を実施した。発症4か月、Gait Judge Systemにて麻痺側の大腿直筋や腓腹筋に微弱な筋活動もみられ、semi-KAFOでの側方介助歩行を併用した。また、歩行距離が80m程度と短かった為、200m程度に増加させた。発症6か月でT-cane+短下肢装具(AFO)に移行したが、骨盤swayや麻痺側のtoe clearance低下がみられ、骨盤介助を継続した。また、骨盤後傾による麻痺側の努力的なswingがみられ、疲労蓄積しやすく、歩行距離は100m程度になっていた。最終的にT-caneとAFOの2動作前型歩行となったが、ADLは居室内杖歩行見守りとなり目標は達成せず、発症6か月半で自宅退院となった。最終評価はSIAS-motor下肢2-2-0、体性感覚脱失、SCPは0、BBSは34で360°回転は困難であった。FIMは運動58、認知23で移動(歩行)は1のままとなった。
【結論】
歩行では骨盤swayやtoe clearance低下、努力的なswingが残存し、安全性は低く、屋内歩行獲得に至らなかった。原因として、歩行練習の中で十分な距離を得られなかったことや過剰な介助により脊髄小脳路を介したフィードバック(FB)や誤差修正の機会の損失を招いた可能性が考えられた。さらに、練習の中で言語によるFBや意識的な課題反復の割合が多く、前頭連合野の機能が低下している本症例にとって余計な混乱を招いた可能性も考えられた。