第34回大阪府理学療法学術大会

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selection oral session

事前公開

[SO-02] 【事前公開】査読者推薦演題②(回復期)

座長:脇田 正徳(関西医科大学)

[SO-02-2] Severe COVID-19後、重度の起立性低血圧を呈した被殻出血一例に対する早期理学療法経験

渡辺 広希1, 山本 洋司1,2, 惠飛須 俊彦2,3 (1.関西電力病院リハビリテーション部, 2.関西電力医学研究所リハビリテーション医学研究部, 3.関西電力病院リハビリテーション科)

Keywords:感染予防策、ICU

【症例紹介】
既往症がない50歳代男性、診断名は右被殻出血(CT分類:Ⅳb、血腫量:75ml)であった。入院時のNIHSSは37点であり、同日開頭血腫除去術を施行された。理学療法は第13病日に端坐位練習、第15病日に立位練習を開始した。広範な脳損傷による自律神経障害と考えられる起立性低血圧を認めたため、Tilt tableを使用した段階的な起立負荷を行った。その後、起立性低血圧は緩徐に改善し、第46病日よりKAFO歩行練習を開始し、第80病日まで継続した。第80病日の理学所見は、GCS4/4/6、NIHSS16点、上下肢MMT(R/L)5/0、重度感覚障害、Hoffer座位能力分類2、ABMSⅡ12/30点であった。第81病日にCOVID-19を発症し、抗体カクテル療法が開始された。第84病日に酸素化悪化のため人工呼吸器管理およびステロイドパルス療法開始となり、第86病日に抜管された。同日、ICU内陰圧個室にて、理学療法再開となった。
【評価とリーズニング】
第86病日の理学所見は、GCS4/4/6、見当識障害あり、呼吸数20bpm、SpO2 97%、上下肢MMT(R/L)4/0、重度感覚障害、Hoffer座位能力分類3、ABMSⅡ10/30点であった。起立時の循環動態は、臥位SBP160mmHg HR90bpm、立位SBP80mmHg HR100bpmであり、下肢緊迫帯を使用しても起立性低血圧は改善せず離床困難であった。COVID-19は単なる呼吸器疾患ではなく、後遺症としてあらゆる臓器に多彩な障害を起こすことが報告されている。自律神経障害の有病率は約25%であり、炎症性サイトカインによる交感神経および迷走神経刺激、およびα・β受容体抗体などの関与や、神経系疾患が危険因子であることが示唆されている。起立性低血圧はADLに及ぼす影響が大きく、COVID-19罹患に関わらず、長期臥床が圧受容器反射の感受性低下をもたらす。本症例においては、挿管管理に伴う臥床期間は5日に留められたため、起立性低血圧はCOVID-19の後遺症と考えられた。
【介入と結果】
第86病日、COVID-19リハチームがICU内陰圧個室でPPEを着用し、患者とは正対せず、側方または後方介助にて二人体制で直接介入した。座位、立位の反復練習を頻回に実施し、医師と相談し、α1受容体遮断薬を休薬した。第94病日より起立性低血圧を認めない場合、長下肢装具を用いた歩行練習を実施した。第127病日に当院回復期リハ病棟へ転科となった。転科時の理学所見はGCS4/5/6、見当識障害なし、NIHSS16点、呼吸数15bpm、SpO2 98%、上下肢MMT(R/L)腸腰筋4/2、大腿四頭筋4/1、前脛骨筋4/0、重度感覚障害、Hoffer座位能力分類2、ABMSⅡ14/30点であった。起立時の循環動態は臥位SBP130mmHg HR95bpm、立位SBP120mmHg HR105bpmと起立性低血圧は改善し、経口摂取ならびに積極的な歩行練習が可能となった。
【結論】
COVID-19は後遺症として自律神経障害による起立性低血圧を合併する可能性があり、早期にリハビリテーションを開始する必要性が示唆された。