[AW-01] 保険薬局利用者におけるオーラルフレイルのリスク因子の解析と対策の検討
【目的】高齢者医療ではフレイルへの早期介入が重要とされており,特にオーラルフレイルの段階から適切な介入ができれば,健常な状態に引き戻せると言われている. オーラルフレイルは比較的新しい概念のため,どのような特徴があるのか,特に未治療の者に関する情報はまだ十分ではない.本研究では,保険薬局を利用する高齢者のオーラルフレイルのリスク因子を解析し,その結果に基づく対策を検討した.【方法】北海道薬剤師会臨床・疫学研究倫理審査委員会の承認のもと,株式会社クリオネに属する16の保険薬局を利用した65歳以上の高齢者1476名を対象に,アンケート調査(2020年9月~2021年3月)を行い,各回答をスコア化してカイ二乗検定,ならびにロジスティック回帰分析を行った.【結果】オーラルフレイルのリスクありの被験者は20.5%であった. カイ二乗検定の結果,リスクありの被験者群は,リスクなしの被験者群に比べて,飲み込みにくさあり,むせ込みあり,口渇あり,口臭あり,義歯使用ありの5つのリスク因子の割合が有意に高く(p<0.0001),歯科定期受診ありの割合が有意に低かった(p<0.0001).更に歯科定期受診の有無に着目し,オーラルフレイルリスクを目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.その結果,飲み込みにくさ(95%CI 2.08-5.48),むせ込み(95%CI 2.42-5.42),口渇(95%CI1.36-6.47),義歯使用(95%CI 2.20-4.02)の4つのリスク因子において,歯科定期受診が無い場合にオーラルフレイルのリスクが有意に増加することが明らかとなった. 【考察】オーラルフレイルのリスクに影響を及ぼすのは,年代差よりも各リスク因子の存在と歯科定期受診の有無にあると考えられる.高齢者への服薬指導では,これらの聞き取りによりオーラルフレイルの予防と早期発見に貢献できると考えられる.また,リスク因子を持つ患者に対しては,適切な口腔ケアの推進と歯科受診を促すつなぎ役を担うことが保険薬局として重要な役割であると考える.