第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

デザートセミナー

デザートセミナー4

2022年11月6日(日) 14:50 〜 15:50 第3会場 (5階 502+503)

座長:山口 俊司((株)アインホールディングス 医薬運営統括本部 地域連携部長)

共催:マルホ㈱

[DS4] 薬局における外用剤の指導のコツ
~保湿剤を中心に~

大谷 道輝 (佐々木研究所)

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 2021 年に報告された乾癬患者さんへの外用指導に関するアンケート調査では、47.5%が外用指導してくれていると感じていません。外用指導してくれていると、とても感じている割合は8.7%と10%に達していません。このような背景から、外用療法では外用剤の不適切な使用やアドヒアランスの低下が多く認められています。外用剤に関する指導が不足している一因として、医師や薬剤師など医療従事者の基剤や剤形の理解不足が考えられます。
 皮膚疾患の外用療法では、スキンケアが重要です。このスキンケアは、保湿剤による外用療法が中心となりますが、保湿剤は軟膏剤やクリーム剤および外用液剤に加え、スプレー剤など多く剤形があります。更に、クリーム剤は水中油型基剤と油中水型基剤、外用液剤はローション剤とリニメント剤、スプレー剤は外用エアゾール剤とポンプスプレー剤に分類されます。これらの皮膚に適用する外用剤は、2003 年に生物学的同等性試験が導入され、剤形間で角層中薬物濃度など同等性が担保されています。先発医薬品と後発医薬品間においても、2003 年以降は、この試験により厳格に生物学的同等性が担保されています。一方、剤形間や先発医薬品と後発医薬品間で生物学的同等性が担保されていても、使用感から塗布量やアドヒアランスが異なることにより、治療効果が異なる場合があります。一例として、男性と女性に軟膏剤・クリーム剤およびローション剤を4 日間塗布してもらった場合、軟膏剤に比べクリーム剤やローション剤は塗布量が多いことが示されています。保湿剤では、ヘパリン類似物質油性クリームに比べ、外用エアゾール剤の方が伸びが良く、べたつきが少ないことからアドヒアランスが良好であることが明らかになっています。保湿剤のように広範囲に塗る必要のある外用剤は、塗布時間が10 分を超えると有意にストレスが増加することが報告されており、塗布時間の短縮がアドヒアランス向上に繋がります。
 皮膚に適用する外用剤は、疾患、部位および季節等に応じて選択されますが、患者さんの好みの確認も不可欠です。患者さんへの聴き取りでは、外用剤の基剤や剤形の理解が重要であり、本セミナーでは、保湿剤を中心に基剤や剤形の理解を深めることで患者さんへの説明のコツを紹介します。