第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

教育講演

教育講演2「薬局・薬剤師のDX推進について~電子処方箋の取組状況を中心に~」

2022年11月5日(土) 13:30 〜 14:30 第2会場 (5階 国際会議室501)

[教育講演2] 薬局・薬剤師のDX推進について~電子処方箋の取組状況を中心に~

伊藤 建 (厚生労働省 大臣官房企画官(医薬・生活衛生局併任)電子処方箋サービス推進室長)

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 日本の中長期的(2040 年頃)な人口動態を展望すると、高齢者の人口の伸びは落ち着き、現役世代(担い手)が急減すると見られており、「総就業者数の増加」とともに、「より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現」することが
必要である。このため、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるような社会を構築していくためには、健康寿命の延伸や、医療・福祉サービスの改革による生産性の向上に取り組んで行く必要がある。加えて、持続可能な社会保障制度
としていくためには医療費の抑制も重要な課題である。
 このような背景の下、厚生労働省において、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。薬局・薬剤師のDX については、「患者のための薬局ビジョン」(2015 年)において、対物から対人業務にシフトしていく薬局
のあるべき将来像を示すとともに、本年7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」において、コロナ渦をきっかけとしてオンライン診療・服薬指導をはじめ、世界的に医療分野のDXに関心が飛躍的に高まっ
ている中、地域で活動する医療職種としての役割を強化するための、電子処方箋等マイナポータルを通じた各種医療情報の共有、調剤機器の高度化等の新たな技術等を活用した将来の薬局薬剤師の業務の在り方や必要な対策について整理
した。
 とりわけ、電子処方箋システムについては、来年(2023 年)1 月の運用開始まで残り数ヶ月余りと迫っている。電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのネットワークを活用し、現在紙で行われている処方箋データのやりとりを
する仕組みである。これは、医療機関や薬局、患者それぞれにメリットがあると考えている。直近の処方や調剤履歴について、マイナポータルや電子版お薬手帳アプリ等と連動させることで、患者自身が確認出来るようになるとともに、
医療機関や薬局においても、これまで患者の記憶に頼っていた薬の情報が「見える化」されることで、質の高い医療サービスの提供が可能となる。加えて、重複投薬や併用禁忌の自動チェックを処方箋発行と調剤時の二段階で行うことにより、形式的な疑義照会の件数減少や医療費の更なる抑制にも資すると考えている。更に、電子処方箋の導入により、非対面型の医療サービスの普及拡大に資すると考えている。
 デジタル技術を最大限活用し、患者フォローアップに一層注力する等、地域医療を担う薬局・薬剤師の役割も不断に見直していくことが重要である。