第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー5

2022年11月6日(日) 12:00 〜 13:00 第1会場 (3階 メインホール)

座長:森本 耕三(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器内科 医長)

共催:インスメッド(同)

[LS5-2] 難治性肺MAC症に対するアリケイス®吸入液590㎎の吸入指導実績と指導ポイント

須賀 梓 (公益財団法人結核予防会 複十字病院 薬剤部)

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 2021年7月に発売されたアミカシンリポソーム吸入用懸濁液(アリケイス® 吸入液590㎎:以下アリケイス®)は、通常治療を6か月以上継続しても喀痰培養にて排菌陰性化が達成されていない難治性のMycobacterium avium complex(MAC)症に適応を有する在宅吸入製剤である。ATS/ERS/ESCMID/IDSA ガイドライン2020において、アリケイス®は「ガイドラインに基づく6ヵ月以上の治療に失敗した肺MAC 症患者では、標準的な経口レジメンのみではなくアリケイス® の追加投与を推奨する」と位置づけられており、難治性肺MAC 症患者にとって重要な薬剤である。アリケイス® は、エアロゾル化のための機械的振動を起こす専用超音波ネブライザー(ラミラ® ネブライザシステム)を用い、薬液を入れる吸入器(ハンドセット) は使用の都度の組み立て・分解・洗浄・消毒に加え、定期的な超音波洗浄が必要とされている。
 当院では、吸入手技の他に吸入器の手入れ・周辺機器の取り扱いまでも含めた教育入院を2021年8月より3泊4日で開始し、指導は全て薬剤師が実施している。今回、導入患者の吸入継続率・教育入院までの手順・指導方法を報告する。
 対象は、2021年8月~ 2022年3月に導入目的で入院し、退院後も当院に通院している患者。2022年5月時点における継続状況と副作用をカルテより情報収集した。対象期間中、全36例にアリケイス® が導入され、当院にて継続フォローしたのは27 例であった。全例女性であり、中央値は観察期間188(IQR142.5-231)日、年齢67(IQR59-71.5)歳、身長158(IQR157.1-161.9)㎝、体重43(IQR39.7-47.4)㎏、有病期間4620(IQR2874-5370)日、クラリスロマイシン耐性例は13例であった。全27例のうち、習得不良で吸入困難と判断する例は認めなかった。副作用が原因で継続困難となった例が3名( 過敏性肺臓炎2名、耳鳴り1名)、本人希望により中止となった例が1名で、継続率は85.2%であった。アリケイス® 吸入液590㎎の承認時評価資料では約35%が脱落したと報告され、継続率約65%となる。条件は異なるが、当院の継続率は約85%で習得不能で吸入継続困難と判断された症例はなく、薬剤師が吸入手技や器具の使用方法等の指導を行うことは、治療継続において有用であると考える。
 アリケイス® 吸入療法は菌陰性化後も1年以上吸入しなければならない。当院は入院で導入しているが、外来で導入している施設も報告されている。適正使用には薬剤師による手技の確認と指導の継続が欠かせない。このセミナーを通して吸入指導のポイントなどを共有したい。