第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Bグループ

2022年11月6日(日) 14:10 〜 15:00 ポスター会場1~3 (4階 405+406/409+410/413+414)

[P-002-B] ヴィーガンの患者に使用できる糖尿病治療薬を医師に情報提供した1例

長井 李夏, 谷 磨砂美, 篠原 耕作, 田中 賢一 ((株)サッポロドラッグストアー)

【目的】患者に則した薬物治療を行っていくためには、腎機能や肝機能のような身体的要因の他に、宗教や主義といった個人の思想も尊重する必要がある。今回はヴィーガン(完全菜食主義者)の患者への糖尿病治療薬導入に際し、医師へ情報提供を行った事例を報告する。
【事例の概要】40歳代の女性。次回受診時から糖尿病治療薬を導入することとなったが、ヴィーガンであるため、なるべく動物由来の原料を含んでいない薬を服用したいと薬局へ相談に訪れた。普段、風邪を引いた際はゼラチンを含まない薬や葛根湯を使用しているとのことであった。そこでPMDAの医療用医薬品情報検索により、動物由来の原料と考えられるゼラチン・乳糖・カゼインの3つを含まない薬を絞り込み、それらに動物由来の原料が含まれていないか、薬の製造販売元へ電話とメールにて問い合わせを行った。なお、糖尿病治療の導入に使用される可能性を考慮し、配合薬を除く経口糖尿病薬を調査対象とした。さらに、添加物を調査する関係上、対象を先発品に絞った。
【結果・考察】一部の製造販売元から、「今回の問い合わせは前例がないことから、製剤名の明記は避けてほしい」という要望があったため、薬の商品名・成分名共に公表することは叶わないが、錠剤印字インクに動物由来成分を含むといった、検索だけでは見逃してしまいかねない発見もあった。調査した製品数は45品目であり、それらすべてをリストにして医師へ情報提供を行った。後日、リスト内で動物由来の原料を含まない薬として挙げていた薬剤の1つが患者へ処方され、治療が開始された。原材料に動物由来のものが含まれていないと分かっていることで患者も薬を服用することに抵抗がなく、治療に対して前向きな姿勢が見られた。近年重視されている多様性が認められる社会を実現するために、薬剤師も薬の選択という面で貢献できるのではないかと考えている。