第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Bグループ

2022年11月6日(日) 14:10 〜 15:00 ポスター会場1~3 (4階 405+406/409+410/413+414)

[P-149-B] 伝統的な煎出法が漢方薬に及ぼす影響

城戸 克己, 吉武 実優, 村山 恵子 (第一薬科大学)

【目的】伝統的な漢方薬の煎じ方の一つに再煎法がある。再煎法とは、煎じが終わって薬渣を濾過した後、再び濾液を加熱し濃縮する方法であり、「傷寒論」において柴胡剤、瀉心湯類ならびに旋覆代赭石湯の7処方にこの記載がある。今回は、この中より半夏瀉心湯ついて通常の煎じ方と再煎法による煎じ方で生薬成分、凍結乾燥エキス重量ならびに服用のしやすさについて検討した。【方法】煎じ薬の調整は、半夏瀉心湯1日量をフラスコとマントルヒーターを用い(1)常煎法(初期水量600mLを約300mL)と(2)再煎法(初期水量900mLを約600mLに煎出し再び約300mL)に煎出した。指標成分として日本薬局方(JP18)に規定されているオウゴン(バイカリン)、カンゾウ(グリチルリチン酸)、ならびにオウレン(ベルベリン)についてHPLCを用いて測定した。凍結乾燥エキスは、遠心分離後得られた上澄み液を凍結乾燥し重量を測定した。また、服用のしやすさは、ヒトによる味覚試験を行った。【結果】(1)常煎法:バイカンリン(232.38±1.30 mg/day)、グリチルリチン酸(91.68±1.18 mg /day)、およびベルベリン(8.80±0.58 mg / day) ならびに乾燥重量(4.74±0.09g/ day)、(2)再煎法:バイカンリン(279.25±3.18 mg / day) 、グリチルリチン酸(104.42±2.04 mg / day)、およびベルベリン(7.90±0.28 mg /day)ならびに乾燥重量(5.35±0.07g/ day)であった。味覚試験では、再煎法は苦味、渋味が減少し甘味が増加することで服用しやすいとの結果が得られた。【考察】再煎法は、バイカリン、グリチルリチン酸の溶出量と凍結乾燥エキス量が多いのは初期水量増加に伴う溶出量増加によるものと推定される。服用しやすさは、甘味成分であるグリチルリチン酸の溶出量増加も一因と考えられる。