[P-170-B] がん患者の食事に対する認識・ニーズに基づいた薬局での栄養相談の検討
【目的】外来化学療法施行患者は増加傾向にあり、私生活と両立しながら治療を行う者が増えている。一方、がん患者の多くは薬物治療や放射線治療等により体重減少を認め、生存期間が短縮するとの報告がある。そこで、がん患者の食事に対する認識とニーズを明らかにし、薬局に求められる栄養指導について検討することにした。
【方法】2022年5月16日から6月3日の間に研究実施薬局20店舗に来局した対象者に自記式質問票調査を行った。対象者は、18歳以上でがん治療中もしくは、過去にがんに罹患していた者とした。得られたデータは記述統計、Fisherの直接確率検定にて解析を行った。
【結果】84件の回答を得た。女性が66.7%を占め、50代26.2%、60代23.8%、70代28.6%であった。がん治療の際の栄養管理を大切だと思っている者は98.8%であった。薬局で相談してみたい項目として、「筋肉を落とさない、付きやすい食事」が82.1%と最も多く、次いで「自身の栄養状態の評価方法」80.0%、「必要な栄養量、栄養素量のアドバイス」76.7%であった。さらに食事量が減少している者は減少していない者に比べ、「食べられないときの最低限たべるもの」、「食べられるときに栄養を蓄える食事」、「味覚が変化しているときの食事」の項目が有意に多かった。また、病院での栄養指導の有無は薬局で栄養相談したい項目への影響は認められなかった。
【考察】ほとんどのがん患者が栄養管理の重要性を感じており、特に筋肉量に着目した食事や自身の栄養状態の評価に関心があることが明らかになった。また、食事量が減少している者では、栄養状態を維持するための事項への相談希望が有意に多く、患者の食事摂取量の変化に合わせたアドバイス等個別対応の必要性が示唆された。今後は、がん患者の栄養状態維持・向上と管理サポートを目標に薬局での管理栄養士と栄養相談の存在を広く周知していくと共に、ニーズに合わせた具体的な支援を行っていきたい。