第16回日本薬局学会学術総会

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特別講演

特別講演「COVID-19 最近の話題」

Sun. Nov 6, 2022 10:50 AM - 11:50 AM 第1会場 (3階 メインホール)

[特別講演] COVID-19 最近の話題

忽那 賢志 (大阪大学医学部附属病院 感染制御部教授 兼
大阪大学大学院医学系研究科 感染制御医学講座(感染制御学)教授)

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はコロナウイルス感染症であり、スパイク蛋白と呼ばれる抗原がヒトの細胞表面のACE2 受容体に結合することで細胞内に侵入しウイルスの複製が起こる。このスパイク蛋白をはじめ多くのアミノ酸変異が生じた変異株では、感染性の増加、重症度の変化、免疫逃避による自然感染やワクチン接種による感染予防効果の低下が起こりうる。また治療薬であるモノクローナル抗体は、スパイク蛋白の受容体結合ドメインに結合することで中和効果を発揮するが、変異株ではこの受容体結合ドメインへの結合力が低下することで有効性の低下が起こっていると考えられている。
成人のCOVID-19 感染者の約3 〜 4 割は無症候性感染者とされるが、発症者の潜伏期は約5 日(オミクロン株では3 日)でありインフルエンザ様症状を呈する。嗅覚障害・味覚障害は新型コロナウイルス感染症に特異度の高い症状であるがオミクロン株では頻度が低くなっており、ますます臨床症状だけでの診断が困難となっている。発症者の約2 割が発症から7 〜 10 日目に重症化するのが典型的な経過である。高齢者や基礎疾患を持つ患者、肥満などがリスクファクターである。
急性期を過ぎた後も倦怠感や呼吸苦などが長期的に遷延する後遺症(LONG-COVID)と呼ばれる病態が明らかになってきた。これまでに、コロナに感染した5 人に1 人が後遺症を経験すること、男性よりも女性でみられやすいこと、ワクチン接種により後遺症が生じるリスクを低下させることができること、などが徐々に明らかになってきている。
新型コロナウイルス感染症は、発症後しばらくの間はウイルスが増殖しており抗ウイルス薬が有効と考えられ、また重症化してくる頃には過剰な炎症反応が主病態となる。したがって、病期を適切に捉えた上で、抗ウイルス薬と抗炎症薬とを組み合わせることが重要である。2022 年6 月時点で国内承認されている抗ウイルス活性を持つ薬剤にはレムデシビル、カシリビマブ/ イムデビマブ、ソトロビマブ、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/ リトナビルが、抗炎症薬にはデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブがある。また凝固異常も病態に関わっていることから、ヘパリンなどの抗凝固薬を併用することも一般的となっている。新型コロナウイルス感染症は、飛沫感染および接触感染によって広がるが、いわゆる3 密と呼ばれる空間で伝播しやすいことが分かっている。国内で承認となっている新型コロナワクチンは4 種類あり、2022 年7 月現在は主に2 つのmRNA ワクチンの接種が行われている。いずれも極めて高い感染予防効果が示されており、また第5 波における致死率の低下に寄与したと考えられる。一方で、オミクロン株に対する感染予防効果は大幅に低下しており、また高齢者においては重症化予防効果も時間経過によって低下することから、3 回目となるブースター接種によって再び感染予防効果・重症化予防効果を高める必要がある。4 回目のワクチン接種については、感染予防効果はあまり期待できないものの、重症化予防効果は期待できるため、特に重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人では推奨される。