第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム6
「ワンランクアップの在宅医療 ~ツールを用いた共通認識~」

2022年11月6日(日) 13:10 〜 14:40 第1会場 (3階 メインホール)

座長:川添 哲嗣 (徳島文理大学香川薬学部 医療薬学講座 准教授), 永冨 将寛(日本保険薬局協会 薬局機能創造委員会 副委員長)

共催:一般社団法人 全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)企画

[SY6-1] 在宅業務における情報共有ツール

髙木 和江 (みよの台薬局(株) 在宅事業本部 本部長)

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重度の患者を訪問する機会が増えている。今までは病院で最期を迎えていた患者が家に帰るという選択肢を選べる環境が整ってきたからだろう。また、昨今のコロナ感染により病院での家族面会の制限により家族と会えない患者が、最後の時を迎える場所について家族とすごす時間を選ぶことが増えてきた事も要因となっている。しかしながら、これまで病院にいるときは相談し支援してくれる医療者がすぐそばにいたが、家に帰ると家族やすぐそばにいない訪問の医療者がケアしてくれるようになるわけで、患者や家族の期待と不安は計り知れない。    また、自宅を拠点として、現在の不快な状態を取り除くために、入退院を繰り返しながらなんとか在宅生活を送っている患者も多くいる。そういった患者はしばしば急に入院して、急に退院してくるので、患者や家族、ケアメンバーとのタイムリーな情報の共有は支える側として気を抜けないところだ。
今回紹介するケースは、使用薬や物品が多く、退院後、患者や家族が非常に戸惑い、明らかにパニックになっておりこれから訪問診療や訪問看護、訪問薬局のサービスを継続するか、在宅生活を送るかどうかについても決めかねている様子がはっきりわかる症例であった。
初回訪問時、患者や家族の心配事を聞いたところ真っ先に出てきた言葉は、この物品どうするかわからないんです、だった。その言葉をきっかけに、使用する薬や物品を写真や表にし、患者とその家族に示すことで大きく安心が得られた。また他の医療者にも共有し、再度入院する時にも使用することができた。最初は不安な状況で恐る恐るスタートした療養生活に見えたが、まめに患者に連絡を取り、みんなで患者と患者家族にかかわることで、2,3か月後には患者や家族が前向きに療養生活をおくることができるようになったことをやり取りの中で実感した。
このように在宅導入時のかかわりは非常に重要で今後の明暗を決めるといってもよい。患者ごとの不安を受け止め一緒に考え療養生活のスムーズなスタートがきれるようにサポートしていく事が重要であると考える。