第16回日本薬局学会学術総会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム8
「リフィル処方の現状と展望」

2022年11月6日(日) 14:50 〜 16:20 第2会場 (5階 国際会議室501)

座長:上妻 弘明 ((株)タカラ薬局 店舗統括本部 薬事部長)

[SY8-1] 日本型リフィルの黎明期における現状と対応と展望

今井 博久 (帝京大学大学院公衆衛生学研究科 教授)

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十年以上前からリフィル処方箋制度の導入が中医協で議論されてきたが、ようやく本年度から導入が開始された。欧米では既に導入されており、例えば米国では1951 年(州による)、英国では2002 年から導入され長い歴史を持つが、諸外国と医療事情が異なるため、欧米の制度をそのままわが国に導入することは不可能である。「日本型リフィル制度」というものが求められる。わが国の出来高払い制度、皆保険制度、国家が国民医療の全責任を負う理念を有する医療文化などの背景により、わが国独自の「繰り返し使用可の処方箋の運用に関する制度構築」が必要不可欠である。導入が急に決定されたため、運用ルールが未整備であることは否めないが、日本型リフィル制度を運用する際の要諦は二つある。
ひとつは「診断なしに追加して薬剤投与をする客観的な判断(基準)はどのようにするのか」、もうひとつは「医師および薬剤師の適切な連携の下はどのように担保するのか」である。前者は、これまで対物業務を専業としてきた薬局薬剤師が服用している薬剤に関する、過去1か月間の薬効の評価、有害作用の有無、病状の変化などを把握し正確に判断できるだろうか、あるいは今後はどのようなトレーニング(人材育成)を積み重ねて行くのだろうか等々が課題である。
単純に「元気そうだったから」「これまでと変わらなかったから」で投薬しては専門家ではない。もしそうした判断による投薬ならば必ず医療事故が起き、責任は薬剤師になる。専門性ある客観的な判断が要請される。後者は、抽象的な「適切な連携の下」という表現をどのように具現化して行くのかが課題である。必要に応じて処方医へ情報提供を行うこと、とされ服薬情報提供料算定が可とされているが、具体的な方法論は如何なるものか。対人業務に不慣れな薬剤師がどのようなフォローアップ報告書を作成するのか。厚労省から6月に公表された服用薬剤調整支援料算定の統計値は0%と報告され、現実的に的確なリフィルの報告書を作成できるのであろうか。本学会のシンポジウムに向けて私たちは現状について全国規模で調査し概要をまとめた。私の基調講演では二つの要諦および調査について説明する。総合討論では、それらのデータを活用しつつ、また三人の演者から現場の詳細な課題や今後に向けた問題提起を話していただき、有意義なディスカッションを展開して行きたい。