第17回日本薬局学会学術総会

講演情報

デザートセミナー

デザートセミナー3

2023年10月8日(日) 13:00 〜 14:00 第4会場 (2号館2階 会議室224)

座長:下田 恭司(たんぽぽ薬局株式会社 薬局事業本部 第一業務運営部 部長)

共催:エーザイ㈱

[DS3] 薬剤師からみた不眠症治療

中村 友喜1,2 (1.三重県立こころの医療センター診療技術部技師長兼薬剤室長, 2.感染管理室長)

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 我々は人生の約3分の1を睡眠に費やしている。睡眠の役割については、不明な点も多いが、そのメカニズムは「脳全体が一様に休んでいる状態」と言うわけではない。眠っている間にも脳活動はさまざまに変化しており、睡眠は「多くの行動学的要素と神経学的要素の協調的な相互作用」と言うことができる。また、睡眠は概日性の行動であり、地球の自転と昼夜周期に影響を受ける。
 通常、我々は中枢神経系において、睡眠神経系によってコントロールされる「睡眠欲求」と覚醒神経によってコントロールされる「覚醒力」がバランスをとって生活をしている。しかし、生活習慣や睡眠リズムの乱れ、ストレスやうつ病などの精神疾患、認知症や脳血管障害のような脳神経疾患や呼吸器疾患などの身体疾患、服用薬の影響や飲酒などから「睡眠欲求」と「覚醒力」のバランスが崩れ、「睡眠欲求」よりも「覚醒力」の方が強くなると、不眠に陥ると言われている。
 患者が不眠を訴えてきた時、いきなり睡眠薬が処方される訳ではない。まずは本当に眠れていないのか、不眠の原因はどこにあるのかをアセスメントするところから治療が開始される。睡眠バランスが崩れた原因の解決や睡眠衛生指導によって不眠が改善される場合も多くみられるが、その上で、必要に応じて薬を使って治療を開始される。このような不眠症治療の過程で、薬剤師に期待される役割は不眠のアセスメントや睡眠衛生指導、不眠症治療薬に対する服薬指導など、多岐に渡っている。特に治療薬については、従来から用いられてきたベンゾジアゼピン系睡眠薬に代表されるGABA受容体作動薬以外にオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン作動薬が用いられるようになり、薬剤師が患者の症状に合わせた薬が適切に使用されるように関与していくことで、患者はより安心して治療を進めることが出来るものと考える。