第17回日本薬局学会学術総会

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

Mon. Oct 9, 2023 2:50 PM - 3:30 PM ポスター会場 (2号館3階 会議室231/会議室232+233/会議室234)

[P-102-C] 慢性心不全患者へのダパグリフロジン10mg投与で急性腎盂腎炎の発症が疑われた一例

後藤 結実子, 平山 愛 ((株)永冨調剤薬局)

【背景】
ダパグリフロジン(SGLT2阻害剤)は慢性腎臓病に引き続き慢性心不全への適応拡大となり、糖尿病以外にも幅広く使用が可能となった。本剤の特徴として尿糖が増加することにより、どのSGLT2阻害薬でも共通だが、尿路感染症の頻度が高いことには注意が必要である。今回、難聴があるため副作用発現の初期症状への理解が十分でなく、尿路感染から急性腎盂腎炎に至った一例を紹介する。
【症例】
70代男性。高度難聴。X-13年より高脂血症と高尿酸血症治療。X-6年不安定狭心症からPCI手術施行。X-1年持続的高血圧となり、X年心不全症状発現し腎機能低下も併発。X年12月よりフォシーガ開始。水分摂取量1000ml/日、直近の1年はNT-proBNP平均1700pg/ml前後で推移 。X+2年8月発熱と腰部痛で発熱外来受診。受診前数日間は15分おきの頻尿症状が出ていたが、自己判断で様子観察をしていた。血液検査にてCRP8.5mg/dl、WBC18000/μl、尿検査にて尿潜血(+++)尿たんぱく(+)、尿糖(++)、尿培養未実施だが急性腎盂腎炎の診断加療となった。外来にてセフトリアキソン点滴2日、レボフロキサシン初回500mg、翌日から250mgに減量し計8日間内服。CRP2.1mg/dl、WBC6800/μlに低下。NT-proBNP1984pg/mlと一時的に高値になるが、その後大きな循環動態の悪化はなく改善した。
【考察】
今回の症例は、尿路感染からの急性腎盂腎炎発症と考えられる。ダパグリフロジンの重大な副作用として1~5%未満に尿路感染(膀胱炎等)、0.1%未満で腎盂腎炎の報告がある。糖尿病は尿路感染症の危険因子であることが知られているが、糖尿病がなくても尿路感染に対する副作用対応は詳細な説明が必要である。更に副作用発現の初期症状について、難聴を含め障害を持つ患者に対して理解可能な説明方法の選択が検討される。薬情のみの説明でなく、確実な情報提供と共にその他の副作用兆候の有無もフォローを行うなど継続的な支援が必要である。