第17回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

2023年10月9日(月) 14:50 〜 15:30 ポスター会場 (2号館3階 会議室231/会議室232+233/会議室234)

[P-123-C] レビー小体型認知症と診断された患者のベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬中止により、認知機能の改善、及び幻視が消失した症例

藤原 將平 (南天薬局)

【目的】
高齢者へのベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD受容体作動薬)の使用は、各種criteriaでSTOPリストに挙げられている。一時期の不眠で処方されたBZD受容体作動が延々と処方されているケースが散見される。今回、BZD受容体作動薬が起こしていたとみられる危険な状態を減薬により回避した事例を経験したので共有する。
【事例】
80歳台女性、認知症専門医よりレビー小体型認知症と診断あり。内服薬:降圧薬、スタチン、NSAIDs、PPI、MgO、トリアゾラム錠0.25mg、ゾルピデム錠10mg等の11成分。既往歴:高血圧症、脂質異常症、逆流性食道炎、便秘症、不眠症。主訴:「木の上に人が見える」「睡眠薬は飲んでいたい」。主治医よりドネペジルの追加があったが、薬剤師より待っていただくように相談した。薬剤師から本人へ睡眠薬の危険性を伝え、漸減を提案した。睡眠薬の漸減中止は、1/4錠ずつの減量、頓服への切り替えを行った。
【結果】
約3年かけ処方薬全体を4成分に減薬、BZD受容体作動薬2種を中止した結果、意識がはっきりし、幻視は消失、食欲の増進、表情が豊かになり、歩行が改善した。
【考察】
レビー小体型認知症の症状はBZD受容体作動薬の中止後に消失しており、BZD受容体作動薬が原因であった可能性が高い。本例は、BZD受容体作動薬の副作用を疑わなければレビー小体型認知症のまま加療されていたかもしれない。本人が服薬を希望する場合、通例では患者の想いを尊重し、薬剤師の減薬提案は控える傾向がある。本例は、その通例よりも無加害原則を優先とし、本人の睡眠薬への想いに傾聴しつつも、危険回避のために説明を繰り返すことで、減薬の納得に至った。認知症を疑う患者に対し薬剤師から効果が限定的な抗認知症薬を安易に処方提案する事例が多々見受けられるが、まず行うべきは精神症状に影響する薬剤の減薬であることを強調したい。