第17回日本薬局学会学術総会

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一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

Mon. Oct 9, 2023 2:50 PM - 3:30 PM ポスター会場 (2号館3階 会議室231/会議室232+233/会議室234)

[P-219-C] 未成年患者におけるかかりつけ薬剤師制度の有用性:レセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究

池谷 怜 (国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)

【目的】
 かかりつけ薬剤師制度は成人患者の薬学管理上有用であることが報告されているが、疾病構造の異なる未成年患者における有用性は明らかでない。そこで本後ろ向きコホート研究では、未成年患者における制度の有用性を、重複投薬・相互作用等防止加算の算定を評価項目とすることで調査し明らかにする。
【方法】
 (株)JMDCが提供する2017年4月~2020年3月のレセプトデータを用いて、複数回保険薬局を利用している未成年患者から構成されるコホートを作成した。次に、かかりつけ薬剤師指導料を算定されたものを制度利用群、それ以外を非利用群に分類し、傾向スコアの逆確率重み付け法を用いて両群の患者背景を均一化した。そして重複投薬・相互作用等防止加算の残薬調整に係るもの、残薬調整に係るもの以外それぞれの1,000来局あたり算定率および比を一般化推定方程式(リンク関数: 対数; 確率分布: ポアソン)により推定した。算定率比の95%信頼区間はブートストラップ法により推定した。
【結果】
 非利用群は194,564名、制度利用群は6,109名が分析対象となった。傾向スコアの逆確率重み付け法によって患者背景が均一化された集団において、残薬調整に係るものの算定率(件/1,000来局)は非利用群で0.4、制度利用群で0.6であり、その比は1.6(95%信頼区間: 0.9-2.9)であった。残薬調整に係るもの以外の算定率(件/1,000来局)は非利用群で3.7、制度利用群で4.8であり、その比は1.3(95%信頼区間: 1.1-1.4)であった。
【考察】
 未成年患者では、残薬調整に関してそれ自体を要する場面が少ないために、かかりつけ薬剤師制度を利用してもその有用性が発揮されにくいことが示唆された。一方、かかりつけ薬剤師制度の利用が残薬調整に係るもの以外の算定増加と関連することが示唆されており、制度は重複投薬や相互作用の防止等に寄与することで、未成年患者の薬学管理上有用に機能していると考えられた。