第18回日本薬局学会学術総会

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デザートセミナー

デザートセミナー2

Sat. Nov 2, 2024 2:20 PM - 3:20 PM 第2会場 (5階 503)

座長:渡邉 幸子(ウエルシアホールディングス株式会社 介護事業部長)

共催:東和薬品株式会社

[DS2-1] 地域認知症コホート研究の最近の知見:久山町研究

二宮 利治 (九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 教授・医学博士)

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 超高齢社会を迎えたわが国では、認知症患者が急速に増加し、医療・社会問題となっている。福岡県久山町では、長年にわたり継続中の疫学調査(久山町研究)を継続しており、わが国の地域住民における認知症の実態やその危険因子を明らかにしてきた。久山町では1985年、1992年、1998年、2005年、2012年、2017年、2022年に65歳以上の全住民を対象として認知症調査を行った。その結果、久山町における65歳以上の高齢者における認知症有病率は、1985年から2012年にかけて6.7%から17.9%と有意に増加したが、その後低下傾向を認めた。さらに、久山町研究では地域高齢者の追跡調査の成績を用いて、認知症発症に関与する危険因子や防御因子の探索を行った。その結果、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病、喫煙習慣、孤独感や社会交流の低下が認知症発症の危険因子であることを明らかにした。また、久山町研究では、血漿p-tau値や血漿アミロイドβ値などのAD特異的なバイオマーカに関する研究も推進している。
 一方、定期的な運動は運動機能低下や筋力低下を防ぐ上で重要である。65歳以上の認知症を有しない住民804人を1988年より17年間追跡した成績を用いて、運動習慣の有無が認知症発症に及ぼす影響を検討したところ、週1回でも運動習慣のある方はない方に比べ、20%全認知症の発症リスクが低かった。さらに、2012年の久山町高齢者調査にてMRI検査と最大歩行速度計測を施行した認知症を有しない1,122人を5年間縦断的に追跡した成績を用いて、歩行速度と認知症発症および部位別脳容積の関係について検討した。その結果、最大歩行速度の低下に伴い、認知症の発症リスクは有意に増加した。続いて、前述の認知症を有しない1,122人の頭部MRI画像のデータを用いて、最大歩行速度と部位別脳容積の関係を検討したところ、最大歩行速度低下に伴い、前頭葉、側頭葉、帯状回、島、海馬、内側側頭葉、扁桃体、大脳基底核群、視床、小脳の脳容積が低下した。
 以上のように、認知症の危険因子やリスク低減に関する様々な知見が生み出されており、認知症の発症には複数の要因が関与していることが示唆される。そのため、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防や適切な管理に加え、禁煙、定期的な運動習慣、筋力維持などの様々な因子の包括的な対策に心がけることにより、認知症および認知機能低下の発症リスクの低減を図ることは、健康長寿を実現する上で重要であるといえよう。