第18回日本薬局学会学術総会

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教育アップデートセミナー

教育アップデートセミナー2
「精神科医療における薬局薬剤師の対人業務を考える」

Sun. Nov 3, 2024 1:00 PM - 1:50 PM 第3会場 (3階 315)

座長:竹内 尚子(湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 地域社会薬学 准教授)

[EUS2-2] 統合失調症患者に対応する際の留意点

栗原 正亮 (有限会社みわ薬局 こごみ薬局 代表取締役)

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 諸外国に比べて、日本における国民一人当たりの精神科病床数は突出して多い。国は2004年に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を策定して、7万床の精神科病床削減を目標として対策を行ってきた。しかしながら今現在においてもその目標は達しておらず、今後も引き続き様々な施策が行われる予定である。例えば国は精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(にも包括)の構築を進めている。結果として、今後も保険薬局において統合失調症患者に対応する機会が増えることが予想される。
 統合失調症は病状を数値化できず病識を獲得しづらいことや、認知機能の低下、偏見・差別を受けるのではないかというネガティブな思考が原因となり、服薬アドヒアランス、服薬コンプライアンスが低下して薬物治療における問題が生じやすい。これは入院医療から地域医療への移行に際しての障害の一つとなっている。地域における薬物治療に関しては保険薬局薬剤師の活躍が期待されるところであるが、保険薬局での限られた患者情報や時間的制約により、統合失調症患者への積極的なアプローチを行う際には様々な留意点を考慮する必要がある。
 抗精神病薬を含む処方箋を持参された患者が統合失調症とは限らない。そして統合失調症と診断された患者でさえ、医師によって病名が変わることすらある。また患者本人が統合失調症という診断を受け入れられない場合や家族が否定している場合もある。支離滅裂状態で救急病棟に保護入院となり、病識がなく、服薬に対してネガティブな感情を持っている患者がいたとする。この患者の初回外来投与時にその背景を知らずに、幻聴を抑えるとか再発を予防するといった、具体的な効果や重篤な副作用を指導、説明することは医療者-患者間の信頼関係への悪影響、副作用の懸念を起因とした拒薬など様々なリスクを伴う。
 統合失調症患者への対応として、患者情報の収集は非常に重要なはじめの一歩である。また、保険薬局での窓口対応の場合、前述のような時間的制約や患者情報の少なさなどの制約が多くあるが、統合失調症は慢性疾患であり、治療期間も長期に渡る。数か月、数年単位でその患者固有の疾患に対して患者と向き合い、そしてその共存方法と薬物療法に関して、最善の方法を患者と一緒に探していく姿勢が求められる。
 当日は保険薬局における統合失調症患者への対応について、自身の経験をもとに考察したいと考える。