第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー1

2024年11月2日(土) 12:00 〜 13:00 第1会場 (1階 メインホール)

座長:小林 靖奈(昭和大学薬学部 薬学教育学講座 教授 ・災害薬事インストラクター)

共催:NPO法人医療教育研究所・株式会社マルクリーン

[LS1-1] 災害に対する保険薬局の備えと薬剤師の心構え

渡邉 暁洋 (兵庫医科大学 危機管理医学講座 特任助教)

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 近年、頻発化する自然災害は、私たちの生活基盤を揺るがし、多くの人々の生命と健康を脅かしています。特に、災害時の医療体制の崩壊は、二次的な被害である災害関連死を引き起こす要因となります。この状況下において、薬剤師は、地域住民の健康を守る重要な役割を担っており、その責務はますます大きくなっています。本発表では、災害発生時における保険薬局の備えと薬剤師の心構えについて、特に災害関連死防止と環境衛生の観点から考察し、地域住民との連携を深め、災害に強い地域づくりに貢献する方法を検討したいと思います。
 まず、災害発生時、多くの薬局は被災し、医薬品の供給が滞るという現実があります。停電や断水など、インフラの損傷により、薬局の機能が大幅に制限されることも想定されます。このような状況下において、薬剤師は、被災地における医薬品の供給、健康相談、避難所における薬剤管理など、多岐にわたる業務を担うことが求められます。次に、災害関連死の防止についてです。災害関連死は、単なる負傷だけでなく、慢性疾患の悪化、感染症、心身へのストレスなど、複合的な要因によって引き起こされます。薬剤師は、慢性疾患患者の薬剤管理、感染症予防のための指導、精神的なケアなどを通じて、災害関連死を防止する重要な役割を担うことができます。また、避難所は、感染症が拡大しやすい環境であり、適切な衛生管理が不可欠です。薬剤師は、消毒薬の選定と使用方法の指導、避難所全体の衛生管理、そして住民への健康教育などを行い、感染症の拡大を防ぐ役割を担います。さらに、災害に備えるためには、地域住民との連携を深めることが重要です。薬局は、地域住民にとって身近な存在であり、災害時には情報発信の拠点となることができます。具体的には、地域の薬局を中心に、避難経路や避難場所、医療機関などの情報をまとめた防災マップを作成し、地域住民に配布したり、地域住民を対象とした防災訓練を実施したり、平時から地域住民の健康相談を行い、災害時の備えについてアドバイスしたり、地域の自治会やボランティア団体と連携し、災害時の支援体制を構築したりといった取り組みが考えられます。
 災害はいつ、どこで発生するか予測することは困難です。しかし、日頃から災害に対する備えをしておくことで、被災時の混乱を最小限に抑え、地域住民の生命と健康を守ることにつながります。薬剤師は、専門知識とスキルを活かし、地域住民と共に災害に立ち向かうことが求められます。