第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー3

2024年11月2日(土) 12:00 〜 13:00 第3会場 (3階 315)

座長:細谷 治(日本赤十字社医療センター 薬剤部長)

共催:アストラゼネカ株式会社

[LS3-2] 災害時における高カリウム治療

森 英樹 (岡山赤十字病院 薬剤部長)

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 1995年に発生した阪神淡路大震災は死者6434名と甚大な災害となった。演者が救護に行かせていただいたのは、発災後2週間は経っていた。その震災で圧挫症候群(クラッシュ症候群)を初めて知った。圧挫症候群とは長時間重量物に挟まれていた後に救助された傷病者が、数時間経て腎不全や急性循環障害を生じて死亡する病態であると言われている1)。それは、圧迫解除後の再灌流による急激な高カリウム血症が原因である。その時から災害時における高カリウム血症は決して見逃してはいけないと考えた。
 岡山においても平成30年7月豪雨を経験し救護活動しながら、日常診療を行う事の難しさを痛感した。その経験を活かし岡山県病院薬剤師会においても令和元年5月に災害対策委員会を新しく設置した。ホームページには(会員のページ)災害対策マニュアル作成指針や災害時アクションカード等を掲載している。マニュアルの中には、災害時携帯用医薬品リスト(亜急性期)を載せ、参考にしていただいている。このリストは被災後3~14日、被災後14日以降に分けて記載しているが、各項目とも高カリウム血症改善薬のジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物2)を56包携帯するようにしている。当日は災害時の問題点やこれからの薬剤師のあり方について議論したい。
1)阿南英明:災害時の圧挫症候群と環境性体温異常 日内会誌101:2108‐2114 2012
2)ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)の効能又は効果に関連する注意;本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しないこと