第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー5

2024年11月2日(土) 12:00 〜 13:00 第5会場 (3階 313+314)

座長:佐々木 拓也(マイライフ株式会社 常務取締役)

共催:株式会社ソラミチシステム

[LS5-2] 薬局業務の拡大:薬剤供給から地域生活者のケアの場へ

田浦 貴大 (株式会社ソラミチシステム 代表取締役)

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「薬局サービスの価値は何か。」 2000年、国際薬剤師薬学連合(FIP)と世界保健機関(WHO)は「薬剤師業務のさらなる展開※1」という文書において、「薬剤師は専門職で、社会へ奉仕するために存在し、薬局は薬剤師に予約なしに会うことができ、(中略)病気について最初に援助を求める場所」だと結論付け、薬剤師の役割も、患者ケアの提供へと変化したと述べた。この新たな業務を遂行するため、薬剤師は社会の中で、「ケア提供者」、「情報伝達者」、「意思決定者」、「教育者」、「生涯学習者」、「リーダー」、「マネージャー」、「研究者」といった多様な役割を果たす必要があるとする「Seven Star Pharmacist(7つ星薬剤師)」という概念をWHOが提唱し2000年にFIPが採択した。
このガイドが公開されておよそ25年が過ぎた現在、国により制度の違いはあるものの、薬剤師業務の拡大が続いている。特に、各国共通の課題である社会の高齢化と医療資源の不足、さらに近年の新興感染症への対応や災害の増加により、社会危機の際の薬剤・衛生材料の供給やプライマリ・ケアの提供を行える場所として薬局の活用が進んでいる。
その一方で、今や薬剤師の中心業務となった患者ケアは、言い換えれば、地域社会の中で生活者の健康・ウエルビーイングを支えるという仕事であるが、実際にどのようなことを行えばいいのか、具体的に学ぶ機会は必ずしも十分ではない。そのためFIPでは、薬剤師が地域で果たすべき「食事・運動」、「糖尿病」、「禁煙」、「セルフケア」、「禁煙」、「メンタルヘルス」、「災害」、「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)」など様々なガイドを公開して支援している。国内では、このような薬剤師業務の拡大に伴う、卒後教育の支援体制は、必ずしも十分ではない。
そこで今回、生活者の方々が地域で健康・ウエルビーイングを維持しながら生きることを支援できるスキルと知識を学ぶ研修「行列ができる薬剤師」研修を開発し、Webを通じて実施している。本公演では、この研修プログラムの概要の紹介と併せ、業務効率化を行うことで患者ケアの時間を確保しつつ、日常業務を通じて学びと経験を深める方法について紹介する。
※Developing pharmacy practice: A focus on patient care(薬剤師業務のさらなる展開)
2000年に国際薬剤師薬学連合(International Pharmaceutical Federation: FIP)と世界保健機関(WHO)により発表