第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー7

2024年11月3日(日) 11:50 〜 12:50 第2会場 (5階 503)

座長:尾鳥 勝也(北里大学病院 薬剤部長(北里大学薬学部 教授))

共催:第一三共エスファ株式会社

[LS7-1] 心不全患者さんなどへの病薬連携にお薬手帳シールを活用しませんか
ー新たな視点で地域連携と患者支援をー

鈴木 優司 (東海大学医学部付属病院 薬剤部 部長)

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 「団塊の世代800万人が後期高齢者となる」来年は、「2025年問題」と言われ雇用、医療、福祉等で様々な分野に影響を与えることが予想されてきた。医療現場では、人手不足が大きな問題となる中、高齢者特有の疾患増への対応も求められている。厚生労働省から出されている「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」の「主な死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移」でも急激な老衰の増加に加え、高血圧症を除く心疾患が悪性新生物と同様の伸びを記録している。高齢化に伴いこれからも増加が予想される心疾患に関しては、がんと同様の対策を講じる必要がある。この様な背景もあり、平成30年には「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が定められ、令和4年度には「脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業」(以下モデル事業)が開始されることとなった。
 東海大学では令和5年度のモデル事業において、神奈川県内の施設として採択され、事業目的である「行政や地域の医療機関との連携強化」、「包括的な支援体制構築による患者支援体制の充実」に向けた活動を開始している。この状況下、2024年度の診療報酬改定で格上げされた「調剤後薬剤管理指導料」では、指導料2(60点)として慢性心不全患者が対象に加わり、薬局薬剤師による循環器病対策貢献に関する期待値が示された。
 慢性心不全に関しては、顕著な症状がない場合も多く、生命予後の改善につながる薬剤のコンプライアンスに課題を抱えるケースも見られる。特に、HFrEFと言われる左室駆出率(LVEF)の低下した心不全では、「Fantastic 4」と称するβ遮断薬,MRA,ARNI,SGLT2阻害薬の4薬剤併用も多く、薬局薬剤師による薬学的管理に基づく継続的な指導が望まれている。当薬剤部では、医師などと話し合いながら、症状変化や服薬状況を確認できる「心不全チェックシート」を作成していたが、モデル事業の目的遂行に向け「お薬手帳貼付シール」を加え、地域連携と患者支援をさらに推進することとした。
 本セミナーでは、医師が薬剤師に期待している「心不全チェックシート」の立ち位置、「お薬手帳貼付シール」の運用意義、患者へ繰り返し説明することの大切さなどをご説明し、地域の方々と共に患者を支援することの重要性をお伝えしたい。