第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演)
薬局機能・IT化・薬歴管理・リスクマネジメント

2024年11月3日(日) 14:00 〜 14:50 第6会場 (4階 416+417)

座長:恩田 光子(大阪医科薬科大学薬学部 社会薬学・薬局管理学研究室 教授)
副座長:清水 隆也(株式会社メディカル一光 人事・研修部 課長)

[O-6-6] 服薬期間中の効果的なフォローアップ手順に関する研究~トレーシングレポート作成支援シートの活用~(第2報)

鈴木 雅基1, 平崎 喜朗2, 光谷 良太3, 西澤 諒4, 宮沢 憲太5, 工藤 知也6, 山下 恵6, 富永 佳子7 (1.(株)エムシード, 2.(株)メディック太陽 メッツ西新発田薬局, 3.(有)さど調剤グループ, 4.(有)さど調剤グループ 佐渡薬品薬局, 5.(株)エーアンドエム しなの薬局市民前店, 6.(株)カケハシ, 7.新潟薬科大学 社会薬学研究室)

【目的】トレーシングレポート(TR)を作成する際に確認・記載事項の要点などがチェックできる『TR作成支援シート』(TRひな形含む)を用いることによって、薬剤師の対応としてどのような質的な変化が見いだせるのか個別症例について検討を行う。
【方法】領域別の『TR作成支援シート』4種(抗コリン薬、メトホルミン、緩下薬、睡眠薬)を作成し、4法人の協力薬剤師に対してTR作成時における活用を促した。実施期間中、4法人にて合同症例検討会を開催し、TR作成支援シートの効果的な活用方法などについて共有を図った。
【結果】対象は70代女性(メトホルミン服用)で、本研究の介入前はHbA1c6.7%、来局時にTR作成支援シートに沿って聞き取りをしたところ、残薬などはないものの軟便症状があることが分かった。患者はメトホルミンによる副作用を疑っていたが、主治医はその可能性は低いと考えており、フォローアップ(FU)が必要と考えられた。数日後、TR作成支援シートに沿って電話でFUをすると、朝食を摂らず空腹のまま服用していたため、服用前に何か摂取するようアドバイスした。患者は、サツマイモや水分補給を行ってから服薬するようになり、体調は改善し、軟便の原因の不安も解消したことを後日来局時に聴取したため、TRにて主治医へ報告した。その後、朝食の摂取が習慣化し、HbA1cが5.9%に低下したことも確認できた。
【考察】薬剤師は、長期治療歴がある患者は適切に服用していると考えがちであるが、自己流で服用していることは珍しくない。TR支援シートを活用することによって、薬剤師が注意すべき事項を漏らすことなく確認することが可能になる。さらに、時間的な余裕を持って聞き取りができるFUでは、想定外の課題を発見できる場合もある。薬剤師自身がFUの意義を実感し、TR作成支援シートの活用により聞き取り内容を標準化することで、薬局全体の意識づけ、薬剤師業務の質向上に寄与することが期待される。