第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演)
薬局機能・IT化・薬歴管理・リスクマネジメント

2024年11月3日(日) 14:00 〜 14:50 第6会場 (4階 416+417)

座長:恩田 光子(大阪医科薬科大学薬学部 社会薬学・薬局管理学研究室 教授)
副座長:清水 隆也(株式会社メディカル一光 人事・研修部 課長)

[O-6-9] 薬局薬剤師の患者リスクマネージメントの為に必要な臨床知識教育の必要性の提言―事例からー

谷 博子 (臨床薬学懇談会)

【はじめに】薬局薬剤師職務の一つに患者へのリスクマネージメントがあるが、そのマネージメントを困難にしている一つに、薬剤師の臨床知識不足があるのではないかと思われる。現状では、患者が服薬中に有害事象が起こっているか否かの判断は、服薬指導に当たる薬剤師の知識と想像力に頼るしかなく、それが乏しい薬剤師に当たると有害事象を見逃すことになりかねない。今回、錐体外路障害を医師が本態性振戦と見間違ったという処方に、担当薬剤師が医師に疑義照会したことで有害事象を回避できた事例を紹介し、薬剤師のリスクマネージメントの標準化に向けての提言をしたい。 【事例】80歳台男性。夜間不眠にクエチアピン25mgから徐々に増量し75mg投与されていた。75mgに増量された時から筆者は年齢を鑑みEPS(錐体外路症状を表す)の発現を懸念し見守っていたが、今回アロチノロールが追加処方されたことからその処方に疑問に思った。患者からは、数日前から急に下肢と上肢が震え始め、転びそうになるという訴えと、その震えの振幅が大きいことが観察された。本態性振戦とEPSの鑑別からこの患者の震えはEPSが疑われ、医師と協議した結果クエチアピンが25mgへの減量となり、震えは消失した。今回の事例においては、他の薬剤師からは、そこまで見抜けないという言葉が出た。 【まとめ】薬剤師のリスクマネージメントは必須であるが、その有害事象の病態が把握できていなければ、現在起こっている症状が有害事象であるのかの判断は困難であると考えられる。添付文書には有害事象の症状が記載されているが、その臨床症状の把握は薬局薬剤師にとって乏しい。今回の事例は、経験の浅い薬剤師にあたれば有害事象を見逃しかねない事例であった。患者の高齢化により常用量でも有害事象が出やすい患者が増えており、リスクマネージメントする薬剤師の標準化には有害事象の実際を把握する教育機会も必要と思われた。