第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(口演)

一般演題(口演)
薬局機能・IT化・薬歴管理

2024年11月2日(土) 15:10 〜 16:00 第7会場 (4階 414+415)

座長:西村 佳子(総合メディカル株式会社 学術情報部)
副座長:風間 卓巌(株式会社アイセイ薬局 薬局営業推進部 課長)

[O-7-10] 札幌市桑園地区のICTを用いた薬薬連携:胃がん患者のirAEを疑い適正な検査を提案し治療が継続できた1例

阿部 みさき1, 井上 靖隆2, 宍戸 桃子2 (1.(株)ココカラファインヘルスケア ココカラファイン薬局桑園店, 2.市立札幌病院 薬剤部)

【はじめに】近年薬物療法は高度化し、安全で効果的な薬物療法を行う上で情報活用や医療機関間の連携はより重要なものとなっている。本症例では札幌市桑園地区での医療ICT「すずらんネット」を活用し、ニボルマブ治療中の患者に対し薬局薬剤師がirAEを疑い検査オーダーを提案した結果、適正な治療が継続できた事例を報告する。
【事例】50代男性、胃がん、術後再発。5次治療ニボルマブ施行中、6クール目Day8(以下Cはクール・DはDayを示す)に電話フォローアップ(f/u)を実施し、患者から倦怠感(CTCAE5.0副作用評価:Grade2)が継続している事を聴取。病院薬剤師にトレーシングレポート(TR)報告を行い、倦怠感はirAEの初期症状の可能性があるため、継続的なf/uが必要であると返答を受けた。C8D1来局時、すずらんネットの情報と患者から聴取した内容からTRにてHbA1c測定を依頼した結果、C9D1にHbA1c測定が実施され、認容しうる数値であることを確認した。C11D1来局時、すずらんネットにて尿グルコース2+であることを確認。C11D8電話f/u時に口渇症状の悪化、食欲不振により甘味を多く摂取している事を聴取したが、C9以来HbA1c測定が行われておらず、再度TRにてHbA1c測定を依頼した結果、C12D1にHbA1c測定が実施され、認容しうる数値であることを確認した。C12D8電話f/u時には嚥下困難感の自覚症状を聴取しTR報告。病院薬剤師より「情報を基に重症筋無力症を疑い、血中抗AChR抗体、抗MuSK抗体測定依頼した」と返答を受けた。その後irAEを疑う所見なく、現在C13まで治療継続中である。
【考察】札幌市桑園地区ではICT連携により薬局薬剤師が多くの患者情報を活用したうえで患者f/uを行い、TRによる報告は病院薬剤師がアセスメントを加え医師に報告、薬局薬剤師へフィードバックを行っている。irAEの早期発見など安全で効果的な薬物治療を行うためには、薬薬連携の体制充実は勿論のこと、ICTの活用が不可欠であると考える。