[O-7-12] ロルラチニブによる脂質異常症の発現に関する薬物療法を提案した症例
【目的】ALK遺伝子変異陽性肺がんの薬物療法においてロルラチニブが用いられる場合があるが、ロルラチニブによる高コレステロール血症、高トリグリセリド血症(以下、高TG血症と記載)等の高脂血症が報告されている。高脂血症が起こった場合にスタチン系やフィブラート系薬剤が検討されるが、ロルラチニブとの相互作用が問題となる場合がある。本発表では、ロルラチニブによる高TG血症が発現した患者に対し、相互作用を考慮して薬物治療を提案し高TG血症が改善した症例について報告する。【症例】60歳代男性。右下葉非小細胞肺癌(Stage3A、ALK FISH陽性)。ロルラチニブ錠100mg/dayが開始された患者。ロルラチニブ開始後のday21に高TG血症grade3を発現し、ロルラチニブ錠50mg/dayに減量。高TG血症grade2で経過していたが、day70において再び高TG血症grade3となり、薬剤師より高脂血症治療薬の追加を提案した。【方法】TGの低下を目的にフィブラート系薬を提案した。ロルラチニブとの相互作用の観点からCYP2C9以外に関与しないフェノフィブラートまたは代謝経路がグルクロン酸抱合であるベザフィブラートを提案し、day71にベザフィブラート徐放錠400mg/dayで開始となった。【結果】ロスバスタチン錠を服用していたため、ベザフィブラート併用による横紋筋融解症に注意してモニタリングを行い、ベザフィブラート開始後35日後の血液検査で高TG血症grade1となり、横紋筋融解症の発現なくロルラチニブ50mg/dayのまま休薬なく継続した。【考察】スタチン系やフィブラート系薬剤の種類によっては、ロルラチニブとの相互作用が問題となる可能性があり、薬剤の選択は慎重に行うべきである。本症例のようにスタチン系とフィブラート系薬剤が併用されるケースにおいては、横紋筋融解症の症状や検査値のモニタリングが必要である。これらの対応を適切に行った結果、高TG血症が改善し、薬物治療の適正化に貢献できたと考えられる。