第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Aグループ

2024年11月3日(日) 13:00 〜 13:40 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-073-A] 医薬品副作用データベースを用いた腸間膜静脈硬化症の発症リスクの網羅的分析

林 和生1, 前田 守2, 伊藤 将2, 市ノ渡 真史2, 長谷川 佳孝2, 月岡 良太2, 大石 美也2 (1.アイングループ (株)アインファーマシーズ アイン薬局 上尾店, 2.(株)アインホールディングス)

【目的】腸間膜静脈硬化症(MP)は腸間膜静脈の石灰化により還流障害を起こす疾患で、腹痛、下痢等の症状の他、進行例ではイレウスを呈する場合もあるため、注意が必要である。本研究では医薬品副作用データベース(JADER)を用い、MP発現に関する網羅的な分析を行い、薬局薬剤師が果たすべき役割を考察した。
【方法】2004年4月~2023年9月のJADERデータベースを用い、MPの被疑薬として報告された医薬品を対象に、被疑薬の有無とMP発現の有無に基づく2×2分割表を作成し、報告オッズ比(ROR)とFisher正確確率検定のp値を算出した。ROR>1かつp<0.05未満の場合、被疑薬とMPの関連性を示すシグナル有とした。また、初回投与~MP発現の日数を算出し、その分布に基づきワイブル形状パラメータ(β)を求め、発現パターンを推定した(アイングループ医療研究倫理審査委員会承認番号:AHD-0232)。
【結果】279件の報告中、上位3位は全てサンシシ含有の漢方薬(加味逍遙散:109件、ROR: 6036.9、p<0.001、黄連解毒湯:76件、ROR: 2043.0、p<0.001、茵ちん蒿湯:30件、ROR: 6452.4、p<0.001)で、シグナル有だったが、五苓散(8件、ROR: 263.5、p<0.001)や安中散(6件、ROR: 4708.2、p<0.001)等サンシシを含まない漢方薬にもシグナル検出された。発現パターンを推定できた黄連解毒湯、茵ちん蒿湯、加味逍遙散、清肺湯、辛夷清肺湯は、全てβの95%信頼区間に1を含む偶発故障型であり、初回投与からMP発現までの期間の中央値は、最も短い清肺湯でも1,853日であった。
【考察】本研究から、MP発現に関連する医薬品については、先行研究で報告されているサンシシ含有漢方薬のみならず、サンシシを含まない一部漢方薬でも有意な関連があると示唆された。本研究で得られた知見を基に、服薬指導では漢方薬の服用状況も聴取し、長期服用が疑われる際はMPの啓発や兆候の確認を通して、早期発見に繋げていきたい。