[P-076-A] マイナ保険証利用による特定健診情報から薬物治療の適正化につながった症例
【目的】現在国の取り組みとしてマイナ保険証の推進が行われている。これまで薬局では患者の検査値の把握が困難なことも多かったが、マイナ保険証の利用により特定健診情報が閲覧でき、薬学的介入の幅を広げることができる。今回は腎機能に応じて用量調節が必要な薬に対して、特定健康検診の閲覧から患者に適した投与量を提案し適切な薬物治療に貢献できた症例を報告する。【症例】70代女性、皮膚科を受診し帯状疱疹と診断された患者よりファムシクロビル1500mg/day1日3回の処方箋を応需した。特定健康検診より身長150cm、体重73kg、血清クレアチニン(SCr)値0.95mg/dl、クレアチニンクリアランス(CCr)57ml/minであった。ファムシクロビルは腎機能に応じた用量調節が必要であり、またNSAIDsによる腎血流量低下も懸念されるためマイナ保険証の特定健診情報、患者の体重、身長を参照し、ファムシクロビルの添付文書を参考に1000mg/day(1回500mgを1日2回)への減量を処方医に提案し提案通り処方量に変更となった。【考察】ファムシクロビルは帯状疱疹の場合1500mg/dayが通常用量で処方される。今回の患者はCCr値が57.2ml/minであり添付文書では1000mg/dayへの減量が推奨されている。しかしCCr値は計算式上、体重が重い場合は過大評価されることがあるため実体重と適正体重を比較してファムシクロビルの薬物投与量の考察をした。患者の身長から適正体重は49.5kg(38.8ml/min)であり、CCr値が38.8ml/minの場合、添付文書では1500mg/dayの投与量となる。しかし患者の体重が73kgと適正体重より重く体液量も多くなるため全体のバランスを考慮し、1回500mg1日2回の提案となった。帯状疱疹治療薬では薬剤性腎障害の報告が多く、患者の腎機能に応じた用量調節が特に重要である。マイナ保険証による特定検診情報の活用により、腎機能や肝機能の情報を把握でき、マイナ保険証の使用推進は患者個別の医療に寄与できると考えられる。