[P-079-A] 電子薬歴の患者情報充実を図り抗コリン薬の減量提案に繋がった事例
【背景】
2023年の当薬局における抗コリン薬調剤実態調査において、適切な処方見直しに必要な検査値や副作用等の薬歴における情報不足が浮き彫りとなった。そこで聞き取れた検査値を電子薬歴内のバイタルデータ機能に記録し、電子薬歴の見出しには注意点を記載した。加えて、腎機能低下時に注意すべき抗コリン薬のジソピラミド及びファモチジンについて注意喚起表示設定を行った。今回はこの注意喚起表示を契機として減量提案に繋がった症例を報告する。
【患者情報】
70歳代女性。X年3月、ジソピラミドリン酸塩徐放錠300mg/日の処方が追加。服用期間中は、抗コリン作用に基づく副作用発現有無を確認していたが、腎機能等の詳細な数値は記録していなかった。X+15年1月、患者より検査結果取得(身長150cm、体重47kg、eGFR 39.22mL/min/1.73m2、SCr 1.05mg/dL)。
【減薬提案とその結果】
X+14年12月、腎機能・身長・体重等の検査値を確認するよう電子薬歴に注意喚起を表示。翌月に取得した検査値から個別化eGFRおよびCCrを算出し、中等度腎機能障害を把握。X+15年2月、トレーシングレポートにて用量調整可能なカプセル剤への変更を伴う減量提案を行い、X+15年4月処方時よりジソピラミドカプセル200mg/日へ減量となった。
【考察】
長年同用量で服用していた患者に対し、電子薬歴の注意喚起表示をきっかけに腎機能低下を把握し減量へ繋がった。電子薬歴への注意喚起表示を行った直後に抗コリン薬減量の必要性に気付いたことから、薬剤師が確認しやすく有用であると考えられる。また、高齢者については定期的にバイタルデータを確認し、服薬内容の見直しを行っていくべきと考える。2024年5月日本老年薬学会より日本版抗コリン薬リスクスケールが公開されたことから、薬剤師には抗コリン薬による薬物有害事象を減らすことが求められている。早速新たな基準を電子薬歴に反映させ、抗コリン作用によるリスク把握に役立てたい。