第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

2024年11月3日(日) 14:50 〜 15:20 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-099-C] 高齢者施設における降圧剤の中止による血圧変動と選択される薬剤に関する調査研究

菊池 郁哉1, 小野 陸2, 原 和夫1, 田口 真穂2, 山田 博章2, 小出 彰宏2 (1.(株)わかば, 2.横浜薬科大学 レギュラトリーサイエンス研究室)

【目的】高血圧は加齢とともに増加し、高齢者は一般に複数の疾患を有しており、生理機能の個人差が大きい。降圧剤による高血圧治療のリスクがベネフィットを上回ると判断された場合に減量・中止を検討するが、安全性、有効性への影響を検討した報告は少ない。本研究は高齢者施設入居者のうち降圧剤を中止した症例を抽出し、中止された降圧剤の種類と血圧の変化を調査した。
【方法】(株)わかばの薬剤師が作成した居宅療養管理指導報告書のうち処方変更として降圧剤を1種類以上中止した 247症例、計255回分の訪問記録を抽出した。これらについて中止前後の血圧の変化、降圧目標達成割合、中止薬として選ばれた降圧剤の種類、中止前の内服薬剤数を調査した。降圧目標は診察時140/90mmHg未満とした。
【結果】降圧剤中止により収縮期および拡張期の血圧値が有意に上昇した。中止前後の降圧目標達成割合では、中止前に目標達成できていた224症例のうち83%が中止後も目標達成しており、有効性を維持しながら中止可能な症例が多いことが示唆された。また、降圧剤分類において処方数の多い上位3種の中止頻度は、Ca拮抗薬が73.4%、ARBが59.4%、K保持性利尿薬が74.6%であった。また、中止前の内服薬剤数は中止後の血圧の変化に影響を与えなかった。
【考察】高血圧治療ガイドラインによれば、基本的に降圧剤の中止は推奨されていない。しかし本研究の結果から降圧剤の中止により有意な血圧上昇が見られたが、中止後も83%の症例で降圧目標を達成できていたことから、降圧剤のリスクがベネフィットを上回ると判断した場合には、中止を検討しても良いと考えられる。臨床の現場では様々な降圧剤が使用されているが、血圧データや血液検査結果等とともに医薬品の特性を考慮し薬剤師がアセスメントすることで、降圧剤の減量・中止の提言等、患者個々の状態に応じた適正な治療に貢献できると考える。