第18回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Aグループ

2024年11月3日(日) 13:00 〜 13:40 ポスター会場 (5階 501+502)

[P-115-A] 認知症患者の服薬アドヒアランスの問題に対してプラセボの活用が奏功した一例

野崎 里佳1, 五十嵐 眞里子1, 岩井 雅美1, 大嶋 あゆみ1, 大橋 幸恵1, 中里 実1, 北村 哲2, 渡辺 一弘2, 木村 礼志2, 武田 香陽子3 (1.(株)クリオネ 平岸薬局, 2.(株)クリオネ, 3.北海道科学大学薬学部薬学教育部門)


【目的】認知症患者は過量服用等の服薬アドヒアランスの低下を起こしやすい。今回、服薬管理が困難な在宅患者のBPSD(行動・心理症状)の治療と服薬アドヒアランスの向上のために薬剤師がプラセボの使用を提案し、治療に貢献できた症例について報告する。
【症例】90代女性。要介護1。家族と同居で自宅療養中。訪問診療開始前から当薬局を利用していた。処方日数に対し、早期に薬が無くなってしまう事から、過量服用が疑われており、患者家族に対する物盗られ妄想もあった。訪問診療開始後、医師は処方変更も検討していたが、患者の性格上、変更によって医師への信頼を損ねる可能性もあり慎重になる必要があった。
【方法】当薬局の薬剤師が訪問診療に同行し、患者が服用薬の自己管理を強く希望していることを確認した。医師との協議により還元麦芽糖を主要原材料とする薬理作用が無いプラセボ錠剤であるプラセプラス®(以下PP)を分包して患者自身の管理とし、処方薬は家族管理とした。
【結果】PPを使用後、患者は服用薬の一部(実際は分包したPP)を自己管理できることをとても喜んでおり、家族から渡される実際の医薬品の服用も遵守された。PPがあることで患者家族に対する薬を盗られたという訴えも減少した。元の服用薬とは外観の違うPPに対する服薬拒否も起こらなかった事を医師に報告し、処方変更を検討していた抗精神病薬が追加投与された。その結果、患者の症状は安定してPPは不要となり、物盗られ妄想も無くなった。
【考察】本事例は、医師と薬剤師が連携して患者の意志を最大限尊重しながらも、処方医の治療方針を支えるため、PPを適切に使用して中止することができた一例と考えられる。PPは市販で安易に手に入る分、慢性的な使用や依存に繋がる等のリスクも考えられるが、薬剤師が適切に介入することで、今後の超高齢社会で問題となる認知症患者の服薬管理の一助になると考えられる。